生成AIは大きく「対話型AI」と「エージェント型AI」に分けられます。ChatGPTやGeminiのような対話型と、ファイルを直接編集できるClaude Codeのようなエージェント型の違いと、実務での使い分けを基本から整理します。
今回は、生成AIの分類について、本当に基本的なところに絞って簡単にご紹介します。大きく分けると、生成AIは「対話型AI」と「エージェント型AI」の2つに分類されます。それぞれで使い方が少しずつ異なるため、実際の実務での使い方にも軽く触れながら、全体像をざっくりと整理していきます。
対話型AI
対話型AIは、ChatGPT や Google Gemini などに代表される、チャット形式でやり取りを行うタイプの生成AIです。一般的にも最も利用されており、すでに日常的に使われている先生も多いのではないかと思います。主な使い方としては、従来のGoogle検索の代わりに調べ物をする用途に加えて、文章の構成を考えたり、メール文面の下書きを作成したりといった業務があります。会話形式で指示を出すだけで一定のアウトプットが得られるため、導入のハードルが低い点が特徴です。これまで生成AIに触れたことがない場合は、まずこの対話型AIから使い始めるのが現実的だと思います。
エージェント型AI
エージェント型AIは、パソコン上のファイルに直接アクセスし、実際のファイルを編集できるタイプの生成AIです。対話型AIと同様に会話ベースで指示を出すこともできますが、より「実務に踏み込んだ操作」ができる点が大きな特徴です。代表的なものとしては、Claude Code や、OpenAI Codex(ChatGPT の機能の一部)などが挙げられます。
具体的には、特定のファイルを指定して「この文章を整えてください」と指示すると、そのファイル自体を書き換えてくれます。また、プログラミングの分野では「この部分を修正する」「このコードをチェックする」といった指示に対して、実際のコードを直接編集することが可能です。このように、既存のファイルに対して直接変更を加えられる点が、エージェント型AIの大きな特徴になります。
対話型AIの具体的な用途
対話型AIの具体的な用途として、開業医の先生に関連する場面でいうと、私自身が日常的によく使っているのは、メール返信の文面作成、紹介状の下書き作成といった書類業務です。いずれも「ゼロから考える負担を軽減する」という点で非常に有用で、ある程度のたたき台を短時間で作れるため、日々の業務効率化に直結します。もう一つ、意外かもしれませんが、鑑別診断を考える際にも補助的に活用することがあります。患者さんの年齢、性別、主訴、事前に得られている情報などを入力して鑑別を挙げてもらうと、自分ではあまり考えていなかった視点を補ってくれることがあります。もちろん最終的な判断は医師自身が行う必要がありますが、思考の抜け漏れを防ぐ補助ツールとして使うと、有用性を感じる場面は少なくありません。いわば壁打ち相手として、生成AIは最高のパートナーです。
エージェント型AIの用途
エージェント型AIは、これまで主にプログラミングを行う方が使っている印象が強かったと思いますが、実際にはプログラミングに限らず、一般的な文章ファイルの作成や編集、ファイル整理といった用途にも活用することができます。例えば、文章ファイルを「整えてください」と指示すると、対象のファイルを直接書き換えてくれるため、コピー&ペーストを繰り返す必要がありません。この点が、対話型AIとの大きな違いの一つです。
エージェント型AIの最大の特徴は、指定したファイルやプロジェクト全体の内容を参照できる点にあります。対話型AIの場合は、基本的に貼り付けた情報しか扱えませんが、エージェント型AIでは、あらかじめ指定したファイル群を横断的に参照しながら、情報整理や新規ファイルの生成、既存ファイルの修正を行うことが可能です。横断的にファイルを生成AIがチェックできるということに加え、必要な修正も一気にできるという利点があります。そのため、パソコン上の特定のフォルダをプロジェクトとして扱い、必要なファイルをまとめておくことで、それらの情報に基づいた一貫性のあるアウトプットを得ることができます。複数ファイルにまたがる作業や、継続的な改善が必要な業務では特に有用です。具体的な導入としては、Visual Studio Code に Claude Code や OpenAI Codex を組み込む方法が一般的で、環境構築自体は一度行ってしまえばそれほど難しくありません。さらに、CLI(コマンドライン)操作に慣れてくると、GUIベースの操作よりも柔軟に指示を出せるようになり、できることの幅が大きく広がります。プログラミング用途はもちろん、あらゆる業務で応用が効くため、習得する価値は高いと感じています。しかしながら初期導入や操作にはある程度のハードルがあるのも事実です。そのため、まずは対話型AIに慣れたうえで、セカンドステップとしてエージェント型AIに取り組む、という流れが現実的だと思います。
対話型AIとエージェント型AIの境界
ここまで述べてきた対話型AIとエージェント型AIは、完全に明確に分かれているわけではなく、実際にはその境界はかなり曖昧になってきています。今後はさらにその傾向が強くなっていく可能性が高いと感じています。例えば、Cursor は Visual Studio Code に近いインターフェースを持ちながら、ChatGPT や Google Gemini のような対話型AIを内部に組み込んでおり、ファイルを指定しながらチャット形式で作業を進めることができます。このように、利用する環境によって機能の境界は変わるため、「対話型」「エージェント型」という分類はあくまで概念的な整理であり、実際の運用においては必ずしも明確に分かれるものではないと考えています。
得意・不得意での使い分け
対話型AIとエージェント型AIは、それぞれ得意・不得意があるため、用途に応じて使い分けるのが現実的です。一般的な相談や壁打ち、本音ベースの思考整理など、ファイルを直接操作する必要がない場面では、ブラウザ上の対話型AIがオススメです。私自身は主に ChatGPT を利用していますが、精度や操作性の面でも扱いやすく、まとまったテーマの検討にも向いていると感じています。
一方で、パソコン内の複数ファイルを参照しながら作業を進める必要がある場合や、情報を整理・調整しながらアウトプットを作るような場面では、Visual Studio Code 上で OpenAI Codex や Claude Code を使うことが多くなります。
さらに、Webサービスの開発や本格的なプログラミングを行う場合には、CLI(コマンドライン)環境で Claude Code を使う方法が最も扱いやすいと感じています。GitHub との連携もスムーズで、開発・管理の効率が大きく向上します。
このように、
「対話中心ならブラウザ」
「ファイルを扱うならエディタ」
「本格的な開発ならCLI」
といった形で使い分けるのが、現時点ではバランスのよい運用だと考えています。
ただし、生成AIの進化は非常に速く、1か月前の使い方がすでに古くなっていることも珍しくありません。この記事の内容も、時間とともに陳腐化していく可能性が高いです。そのため、常に最新の情報を追い続けるというよりは、その時点で実用的な方法を取り入れ、必要に応じて見直していく方向が現実的だと思います。また、必ずしも「最も高度で最新の使い方」を目指す必要はありません。私たちはプロのソフトウェアエンジニアではなく、あくまで臨床やクリニック経営が本業です。例えば、対話型AIを使ってメール文面や紹介状を整えるだけでも、日常業務の負担は確実に軽減されます。さらに一歩進んで、プログラミングを取り入れて業務改善やツール作成まで行えるようになれば、それだけでも業務効率は大きく変わってきます。すべて完璧に使いこなそうとすうるのではなく、「必要なところだけ使う」というスタンスで十分に価値はあると感じています。