簡易病名チェッカーの開発

PUBLISHED 開発 #ChatGPT #電子カルテ #レセプト

電子カルテ・医療システムを操作する記事です。ご使用のシステムの利用規約を確認のうえ、自己責任でお試しください。患者さんの情報は、外部の生成AIに送らないでください。

返戻3万5,000円をきっかけに、自作の「病名チェッカー」を開発しました。インフルエンザやCOVID-19の検査・病名・処方内容の整合性を自動で確認し、病名漏れや入力ミスを抽出するツールです。本記事では開発の経緯だけでなく、実際に使用しているツールの公開や導入方法についてもご紹介します。生成AIを活用しながら、開業医が自ら業務改善ツールを作る時代について考えてみます。

現在、当院では自作した「簡易病名チェッカー」を日常的に使用しています。今回は、この病名チェッカーの開発に至った経緯や、実際の開発・運用についてご紹介したいと思います。今回ご紹介する病名チェッカーは、当院で導入しているシステムの中でも中核を担うツールの一つです。毎日使用する非常に実用性の高いツールであり、実際の診療業務の効率化にも大きく貢献しています。私自身、このツールによって日々の業務負担が大きく軽減されたと感じています。比較的シンプルな仕組みで実現できるものですので、ぜひ先生方にも参考にしていただければと思います。

当院の病名チェッカーの変遷

当院では、開院当初はレセスタという病名チェックソフトを使用していました。しかし、開院から1年ほど運用する中で、病名の指摘を受けることも少なくなってきたことや、当院の診療内容に対してはややオーバースペックであると感じていたこと、さらにランニングコストの問題もあり、約1年で利用を終了しました。

その後、特に大きな問題なく運用できていたのですが、繁忙期になると、インフルエンザ抗原検査を実施しているにもかかわらず病名の登録が漏れていたり、検査と病名の整合性が取れていなかったりするケースが散発的に発生していました。病名漏れが原因で月に数件の返戻が続いたことがあり、あらためて病名管理の重要性を認識するきっかけとなりました。

必要性を感じつつも打てる手がなかった

検査に関連する病名漏れで返戻を受けると、金額としてはそれほど大きくなくても、積み重なれば、小規模な診療所にとって無視できない金額になります。しかし当時は、有効な対策をなかなか見つけられずにいました。実際に取れる対策としては、診療終了後にレセプトを目視で再確認するくらいしかありませんでした。もちろん、新たに病名チェックソフトを導入するという選択肢もあります。しかし、返戻による損失額と比較すると、病名チェックソフトのランニングコストの方が高くなってしまうケースが多く、コストパフォーマンスの面から考えると現実的とは言えませんでした。

一方で、返戻を毎月数件でも受けると、金銭的な負担はもちろんですが、精神的な負担もかなりあります。「本来であれば防げたはずのミスだったのではないか」という思いが残り、どうしても気になってしまいます。特に問題だったのは、診療が終わった後の確認作業です。繁忙期の診療で疲れている状態の中で、レセプトを確認しようとしても、人間の集中力には限界があります。どれだけ気を付けていても、一定の確率で見落としが発生してしまう状況は避けられませんでした。

ゾコーバ®を処方した患者へのCOVID-19病名漏れにより高額の返戻を受ける

何とかしなければならないと思いつつも、有効な対策を打てないままの日々が悶々と続いていました。しかし、ある出来事が大きな転機となります。それは、ゾコーバ®を処方した患者さんに対して発生した病名登録のミスでした。COVID-19の病名自体は登録されていたのですが、「疑い」の病名が残ったままになっており、その状態でゾコーバ®が処方されていました。その結果、高額な返戻を受けることになったのです。

返戻額は、1件で約3万5,000円でした。通常の病名漏れによる返戻とは比較にならない金額であり、精神的にもかなり大きなダメージを受けました。この出来事は、「本当に何とかしなければならない」と真剣に考える大きなきっかけとなりました。

この件を通じて強く実感したのは、自分一人が目視で確認するだけではどうしても限界があるということです。どれだけ注意していても、人間が行う以上、見落としを完全に無くすことはできません。病名管理を確実なものにするためには、何らかのシステム的な仕組みを導入する必要があると確信するようになりました。

プログラミングの実務運用が急務になる

プロフィールや他の記事でも少し触れましたが、私はそれ以前からプログラミングについては多少学習を進めていました。Progateをはじめとしたオンライン講座を利用したり、一部の有料教材を購入して学習したりと、基礎的な知識を身につける取り組みは続けていました。ただし、当時のプログラミングに対する位置付けは、「今後必要になる可能性が高いので学んでおいた方がよいだろう」という程度のものでした。診療所の業務改善に多少役立つかもしれない、あるいはサイト運営をするうえで知識として持っていると便利かもしれない、といった認識であり、そこまで切迫したものではありませんでした。

しかし、この返戻の件をきっかけに状況は大きく変わります。それまでの「いつか役に立つかもしれない知識」ではなく、「今すぐ解決しなければならない課題を解決するための手段」へと位置付けが変わったのです。私にとってプログラミングは、学習そのものが目的ではなくなりました。短期間で実際の業務に投入し、現場で運用できる仕組みとして形にしなければならないものへと一気に変わったのです。この出来事は、私が本格的に業務改善ツールの開発へ踏み出す大きな転機になりました。

手段を選ばず生成AIを使う

それまでは、本を読んだりオンライン教材を利用したりしながら、一つ一つ内容を理解し、簡単なプログラムを書いて動作を確認するという学習を続けていました。プログラミング学習としては王道の方法であり、知識や理解は着実に積み上がっていきました。しかし一方で、その方法だけで実務に使えるレベルへ到達するには、あまりにも長い時間がかかるとも感じていました。実際、開業医としての業務と並行しながら学習を続ける場合、その延長線上で実務運用レベルまで到達するには途方もない時間が可能性が高く、また途中で挫折してしまう可能性も十分にあると薄々感じていました。

ところが、病名チェッカーの開発は待ってくれません。返戻による損失を防ぐためには、できるだけ早く現場で使える仕組みを作る必要がありました。そんな中、とある書籍(『#100日チャレンジ 毎日連続100本アプリを作ったら人生が変わった』)をきっかけに、生成AIを活用しながらプログラミングを進めるという考え方に出会いました。そして私は、その方法を一気に取り入れることにしました。

それまでの私は、「まず理解してから、できることを増やしていく」という考え方でした。受験勉強の延長線のような形で学習を進めていたのです。しかしこの時を境に考え方を大きく変えました。まずは理解できなくても、とりあえず使えるものを作る。理解できる部分は後から理解する。極端な話、全て理解できなくても実際に動いて業務改善につながるのであれば、それでも構わない。そのくらい割り切って生成AIを活用し、プログラミングに取り組むようになりました。

この判断は私にとって非常に大きな転機となりました。後から振り返ると、この時に生成AIを徹底的に活用する方向へ舵を切ったことが、その後の開発スタイルや業務改善の進め方を大きく変えるきっかけになったと感じています。

ChatGPTのみで手探りで作成する

しかしながら、当時は病名チェッカーを作ろうにも、何をどうすればよいのか全く分かりませんでした。ただ一つ分かっていたのは、ChatGPTにやりたいことを伝えれば、ある程度コードを書いてくれるらしいということです。そこで私は、自分が実現したいことをひたすらChatGPTに相談しました。技術選定や使用言語、どのような方法で開発を進めればよいかといったことも含め、ほぼすべてをChatGPTとの対話の中で模索していきました。正直なところ、最初は何から手を付ければよいのかさえ分からず、かなり遠回りをしていました。そもそも電子カルテからどのようにデータを取得すればよいのかも分かりませんでした。

そんな中、偶然にもデジカルからCSVファイルをダウンロードできることを知りました。そして、「これこそが病名チェッカー開発の鍵になるのではないか」と気付きました。今振り返ると、本当に偶然の発見であり、非常に幸運だったと思います。もっとも、その後も順調だったわけではありません。最初の頃は、CSVファイルから手作業で個人情報を削除し、それをローカルのデータベースへ取り込むという、今から考えるとかなり回りくどい方法を取っていました。また、CSVの取り込み過程では何度もエラーが発生し、その都度悪戦苦闘していました。データベースへの登録に失敗したり、重複登録が発生したり、時にはデータを全部吹き飛ばしたりと、数え切れないほどの試行錯誤を繰り返しました。今思えばずいぶん無理のあることをしていたように感じますが、当時の私はプログラミング初心者でしたので、それもやむを得なかったのだと思います。

しかし、不思議なもので、分からないなりにもめげずに手を動かし続けていると、少しずつ理解できるようになってきます。幸い、書籍やオンライン講座で学んだ基礎知識はありましたので、ChatGPTが説明している内容が全く理解できないというわけではありませんでした。むしろ、これまで学んできた知識が実際の業務改善に結び付いていく過程を、生成AIとの対話を通じて体験できたことは非常に刺激的でした。そして、「自分がこれまで学んできたことは決して無駄ではなかったのだ」と実感する機会にもなりました。

当時はまだClaude Codeを知らない

いま振り返ると、この病名チェッカーのような仕組みは、Claude Codeを使えばかなり短期間で実装できると思います。しかし、当時の私はまだClaude Codeの存在を知らず、プログラミングそのものにもそれほど慣れていなかったため、このプロジェクトの開発には相応の時間がかかりました。当時は本当に手探りの状態で進めていましたので、最初に形になるまででも2〜3週間ほどかかりました。その後も細かな調整を繰り返し、現在のようにターミナルでコマンドを一つ実行するだけで病名チェックが完了する運用形態になるまでには、さらに数か月を要しました。今でこそシンプルに動いていますが、そこへ至るまでにはかなりの試行錯誤がありました。

ただ、これは長かったとも言えますが、一方でプログラミング初心者が自力だけで同じものを作ろうとした場合を考えると、むしろ非常に短期間だったとも感じています。もし生成AIを使わず、自分で一つひとつコードを書きながら学習を進めていたとしたら、実務で使えるレベルに到達するまでには少なくとも数年、場合によっては10年以上かかっていたかもしれません。また、実際の開発だけを考えても、手作業で行う場合は、3〜4か月以上かかった思います。さらに言えば、その過程ではエラーや不具合が頻発していましたので、生成AIの助けがなければ途中で諦めてしまっていた可能性も十分にあったと思います。分からないことがあればすぐに相談でき、エラーの原因を一緒に考えてもらえる環境があったからこそ、最後まで開発を続けることができました。

そのように考えると、ある程度の時間はかかったとはいえ、生成AIを活用することで、実際にクリニックの業務で使用できる病名チェッカーを数カ月で一つの形にできたことは非常に大きな意味があったと思います。実際に最初に動いた時の感動は今でもよく覚えています。自分が考えていた仕組みが実際に動き、診療所の業務改善につながることを目の当たりにした時、生成AIとプログラミングの可能性の大きさを強く実感しました。

具体的な導入方法

ここからは、実際の病名チェッカーの使い方や導入方法についてご紹介したいと思います。ただし、まず前提として知っていただきたいことがあります。この病名チェッカーはMacでの利用を前提としており、環境構築についてはご自身で行っていただく必要があります。また、今回公開するものは私が実際に使用しているものをベースに、できるだけ一般的な環境でも導入しやすいよう調整したものですが、そのままスムーズに動作しない可能性もあります。環境によってはエラーが表示される場合もあると思います。その際は、ぜひエラーメッセージをそのままChatGPTに貼り付けて相談してみてください。生成AIと一緒に進めれば、多くの場合は解決できると思います。今回は面倒な「コードそのものを作る」という工程はすでに終わっていますので、その点についてはハードルを越えた状態からスタートできます。

もしすでにClaude Codeを導入されている先生であれば、さらに導入は容易になります。適当なプロジェクトフォルダを作成し、その中に今回配布するファイルを配置してプロジェクトとして保存してください。その状態でClaude Codeを開けば、エラーが発生したとしても、Claude Codeに相談しながら進めれば解決できるケースがほとんどです。そのため、個人的にはこの方法が最もおすすめです。

また、すでにClaude Codeを活用されている先生であれば、今回ご紹介するコードをベースに自由に改変していただいて構いません。今回はCOVID-19とインフルエンザの病名チェックをする構成になっていますが、先生方の診療内容に応じて、アデノウイルスや溶連菌感染症などのチェックにも応用できます。検査キットの実施状況と病名の整合性を確認するという考え方自体は汎用性が高く、少しアレンジするだけでさまざまな用途に展開できると思います。Claude Codeを活用すれば、そのようなカスタマイズも比較的容易に行えるはずです。

もちろん理想を言えば、最初から自分専用のシステムを一から作るのが最も使いやすいと思います。しかしまずはファーストステップとして、既存の仕組みを実際に動かしてみること。そして、その仕組みを自分の診療スタイルに合わせて少しずつ改変してみることから始めるのがよいのではないかと思います。この過程を経験するだけでも、生成AIを活用した業務改善の感覚はかなりつかめるはずです。そして一度その感覚を身につければ、その後はご自身の業務に合わせてさまざまなツールを作れるようになっていくと思います。今回の病名チェッカーが、その第一歩になれば幸いです。

このファイルでできることを再確認する

ここで改めて、この病名チェッカーで何ができるのかをご紹介したいと思います。

このファイルでは、COVID-19とインフルエンザに関して、検査・病名・処方内容の整合性をチェックする仕組みになっています。具体的には、検査を実施したにもかかわらず病名が登録されていないケースや、治療薬を処方したにもかかわらず病名が適切に登録されていないケース、あるいは検査を実施していないにもかかわらず病名だけが残っているケースなどを自動的に抽出します。

現在は以下の6つのロジックでチェックを行っています。いずれも実際に当院で発生したミスや、返戻につながる可能性があるパターンをもとに作成していますので、今後ご自身で改変される際の参考にもなると思います。

Q1|COVID-19の検査なしでCOVID関連病名が登録されている

COVID-19の検査(SARS-CoV-2抗原検査など)を実施していないにもかかわらず、COVID-19関連の病名が登録されている患者さんを抽出します。レセプトでは返戻にはならないものの、見栄えが悪くなるのを防ぐ目的です。

Q2|COVID-19の検査をしたのに病名が登録されていない

COVID-19の検査を実施しているにもかかわらず、COVID-19関連の病名が登録されていない患者さんを抽出します。病名入力漏れの確認に使用します。

Q3|インフルエンザの検査をしたのに病名が登録されていない

インフルエンザ検査を実施しているにもかかわらず、インフルエンザ関連の病名が登録されていない患者さんを抽出します。

Q4|ゾコーバを処方したのにCOVID-19病名がない

ゾコーバ®(エンシトレルビル)を処方しているにもかかわらず、COVID-19病名が登録されていない、あるいは「疑い」のままになっている患者さんを抽出します。

Q5|インフルエンザ治療薬を処方したのにインフル病名がない

抗インフルエンザ薬を処方しているにもかかわらず、インフルエンザ病名が登録されていない、あるいは「疑い」のままになっている患者さんを抽出します。

Q6|インフルエンザ病名の開始日と転帰日が同日になっている

インフルエンザ病名について、開始日と転帰日が同一日であり、かつ「疑い」病名ではない患者さんを抽出します。病名登録時の入力ミスや記録ミスが疑われるケースを確認するためのチェックです。

まずはCSVファイルを取得する

まず最初に行っていただきたいのは、M3デジカルからカルテデータをCSVファイルとして出力することです。実はM3デジカルには、カルテデータをCSV形式で抽出できる機能が用意されています。今回の病名チェッカーも、このCSVファイルを利用してチェックを行っています。この機能は非常に便利なのですが、ほとんでの先生がご存知ないと思います。私自身も病名チェッカーを開発するまで意識して使ったことはありませんでしたが、診療所のデータを活用した業務改善を考えるうえでは、最重要機能です。この機能を作ってくれたM3には本当に感謝しています。

具体的なCSVファイルの取得方法をご紹介していきます。

まず以下のボタンをクリックします。

「経営データ集計」クリックします。

「経営データ集計」クリック後、以下の画面が開きます。データ出力の範囲を設定しますが、最初は1日分だけのほうが軽く使いやすいです。新規データ出力後、数分でダウンロード可能になります。

ダウロードすると、デジカルであらかじめ設定したパスワードを求められるので入力して開きます。

ファイルを開くと4つのファイルが入っており、一つはデータ説明のtxtファイルです。これは生成AIにデータ説明をするときにも使用します。普段使用するのは、他の3つのCSVファイルです。これがカルテ分析の核になります。単純な作業ですが、じつはこれだけで、元となるデータはすべて揃っています。これを先生がどのように料理するかというところです。

カルテチェッカーのツール

病名チェッカーは以下のリンクからダウンロード可能です。

Download

病名チェッカー(Mac専用)

注意事項をお読みいただき、同意してからダウンロードできます。

ダウンロードページへ →

まず念のための確認になりますが、本ツールの利用によって何らかのトラブルや損害が発生した場合でも、当方では責任を負うことができません。ご利用にあたっては、必ず自己責任でお願いいたします。

また、私は悪意のあるプログラムを配布する意図は一切ありませんが、一般論として、個人サイトからプログラムをダウンロードする場合には十分な注意が必要です。仮に配布者に悪意がなくても、第三者による不正アクセスや改ざんなどによって、本来意図しないファイルが配布されてしまう可能性を完全に否定することはできません。例えば、このサイト自体が悪意のある第三者による攻撃を受け、配布ファイルが意図しない内容に書き換えられてしまう可能性も、極めて低いとはいえゼロではありません。そのため、ダウンロードしたファイルについては、可能であればウイルス対策ソフトでスキャンを行うことをおすすめします。また、近年ではChatGPTなどの生成AIにファイルの内容を確認してもらうことも可能ですので、そのような方法を活用して安全性を確認していただくのもよいと思います。

これは今回のツールに限らず、インターネット上からプログラムやファイルをダウンロードする際の基本的な習慣として、ぜひ意識していただければと思います。

実際の使用方法

Macであれば、Pythonは標準でインストールされていることが多いため、同梱している「Pythonインストール」の手順は不要な場合があります。まずは setup.command を実行してください。環境によっては「開発元を確認できません」などの警告が表示される場合があります。その際は、ファイルの安全性を十分確認したうえで「右クリック」 →「開く」で開いてください。ターミナルが起動し、必要な環境の構築が自動的に開始されます。環境によっては数分程度かかる場合があります。また、この処理ではインターネット接続が必要になります。

環境構築が完了したら、続いて start.command をダブルクリックしてください。ブラウザが自動的に起動し、病名チェッカーの画面が表示されます。あとは画面の案内に従って進めるだけです。まず対象年月を選択し、その後、デジカルからダウンロードしたZIPファイルをアップロードします。ZIPファイルは解凍せず、そのままアップロードできるようになっています。必要に応じてパスワードを入力すると、ZIPファイルの展開から必要ファイルの抽出まで自動で実行されます。

一度ZIPファイルを解凍してしまった場合は、元のZIPファイルをそのままアップロードしてください。実行ボタンを押すと、通常は数秒程度でチェック結果が表示されます。抽出された内容を確認し、病名漏れや登録ミスがないかを確認していただければと思います。

最初は動作確認も兼ねて、サンプル患者さんなどで試してみることをおすすめします。例えば、COVID-19検査を実施しているにもかかわらず病名をあえて登録しない状態を作り、適切に抽出されるか確認してみてください。意図した通りに抽出されることを確認できれば、その後は実際の運用に移行していただけると思います。

トラブルはほぼ確実に発生する

ここまでさらっと簡単に説明してきましたが、実際に導入していただく際には、おそらく何らかのトラブルが発生すると思います。最初の setup.command が開けず詰まる先生も少なくないと推察しますし、またターミナル上に見慣れないエラーメッセージが表示されたり、聞き慣れないコマンドが並んだりして、不安になる先生もみえると思います。

パソコンの環境は人によって大きく異なります。OSのバージョンやインストールされているソフトウェア、各種設定などが異なるため、全員が最初から全く同じように動作するということはほとんどありません。そのため、最初から何の問題もなくスムーズに動くケースの方がむしろ少ないのではないかと思います。

もちろん、どうしても解決できない場合は導入を断念せざるを得ないケースもあると思います。しかし、ある程度のトラブルであれば、生成AIを活用しながら乗り越えられることも多いと思います。実際、私自身も開発中には数え切れないほどのエラーに遭遇しましたが、その都度ChatGPTやClaudeを活用しながら解決してきました。エラーがでたらまず生成AIにエラーを貼ってみてください。おそらく解決できるはずです。

ファイルの中身は改変可能

この配布ファイルの中には、インフルエンザとCOVID-19の病名チェックを行うロジックそのものはすべて含まれています。具体的には、拡張子が .py のファイルが病名チェックの主要な処理を担当しております。

今回は使いやすさを考えてブラウザ経由で実行できる形にしていますが、必ずしもその方法にこだわる必要はありません。必要であればターミナルから直接実行するように変更も可能ですし、ご自身の運用に合わせて自由に変更していただいて構いません。Claude Codeを利用されている先生であれば、配布したファイル一式をそのまま読み込ませて、「自分の環境で動くように修正してほしい」と依頼するのも一つの方法です。今回の配布ファイルは完成品として使うだけでなく、生成AIを活用しながらご自身の環境に合わせて育てていくための土台としても活用していただければと思います。

実際はどのように使っているのか

あくまで参考ですが、実際の私はもう少し効率化した形で運用しています。

というのも、CSVファイルをアップロードしたり、パスワードを入力したりする作業すら面倒に感じてしまうため、その部分も含めて自動化してしまっています。このあたりについては、また別の記事で詳しくご紹介しようと思っていますが、Macのターミナルには独自のショートカットコマンドを登録することができます。私はそこに病名チェッカーを起動するためのコマンドを登録しており、「KR」というショートカットを使用しています。これは「カルテ」の略です。

現在の運用では、M3デジカルからダウンロードしたCSVファイルがダウンロードフォルダに保存されている状態で、ターミナルから「KR」と入力するだけで病名チェックが開始されます。対象年月の判定、データの取り込み、必要な処理の実行まで自動で行われ、最終的な結果だけがブラウザに表示される仕組みになっています。実際には数秒程度で結果が表示されるため、日常業務の中でもほとんど負担を感じることはありません。

ただし、今回は配布用ということもあり、あまり複雑な仕組みにはしていません。高度に自動化された環境は便利な反面、環境依存の問題が増え、導入時のトラブルも発生しやすくなります。そのため今回は、CSVファイルをダウンロードし、ZIPファイルをアップロードして解析するという比較的シンプルな構成にしています。

そのためこの病名チェッカーは、さらに効率化する余地は十分にあります。そのあたりについては、病名チェッカーの活用方法や業務自動化の実例として、また別の記事でご紹介できればと思っています。

動くようになれば本当に楽

ここから先は、実際に導入に成功した先生であればかなり共感していただけると思うのですが、日々の病名チェックが本当に楽になります。インフルエンザやCOVID-19の抗原検査、あるいは治療薬に関連した病名チェックというのは、決して難しい作業ではありません。普段であれば数人分を確認するだけですので、それほど大きな負担にはなりません。しかし、インフルエンザの流行期など繁忙期になると話は別です。1日に10人以上確認しなければならないことも珍しくなく、そのような状況になると、一件一件カルテを開いて目視で確認する作業は意外と時間がかかります。それがボタン一つで終わるようになると、本当に楽です。一度この状態を経験してしまうと、なかなか元のやり方には戻れないと思います。

しかも一度ロジックが正しく組めてしまえば、人間が起こすような単純な見落としや確認漏れは構造上おこりません。人間は疲れている時ほどミスは起こりやすくなりますが、そのような人為的ミスを防げるという点も大きなメリットです。また、仮に一日のチェックで10分業務を短縮できるとすれば、その10分を別の業務に振り向けることができます。10分というと小さく感じるかもしれませんが、毎日積み重なれば決して無視できない時間になります。

さらに、このようなツールの良いところは、一度作ってしまえば長期間使い続けられることです。もちろん電子カルテの仕様変更や診療報酬改定などに応じて微調整が必要になることはあります。しかし、基本的な考え方は非常に普遍的なものですので、適宜修正を加えながら長く運用していくことができます。また運用していると、「アデノウイルスもチェックしたい」「溶連菌感染症も対象にしたい」といった要望が出てくることがあります。しかし、そのような追加も既存のロジックを応用するだけで対応できることがほとんどです。一から作り直す必要はなく、少し改良を加えるだけで機能を拡張できます。

個人的には、この点が自作ツールの非常に大きな魅力だと思っています。自分の診療スタイルや運用に合わせて少しずつ改良し、本当に自分に合った環境を作り上げていくことができます。そして一度その感覚を知ってしまうと、「この作業も自動化できるのではないか」「ここも改善できるのではないか」という発想が自然に出てくるようになります。そうやって少しずつ積み上げていくことで、日々の診療業務は確実に楽になっていきます。その意味でも、このような業務改善ツールには非常に大きな価値があるのではないかと思っています。

うまく導入できなかった先生へ

もし今回うまく導入できなかったとしても、あまり気にしないでいただきたいと思います。というのも、今回配布しているツールは、決して初心者向けに十分配慮された形になっているとは言えないからです。そのため、途中でエラーが出たり、思うように動かなかったりしたとしても、それは決して先生方の問題ではありません。私の力不足によるところが大きいです。

私自身、この病名チェッカーはかなり手探りで開発してきました。実際に毎日使用しているものをベースに公開していますが、もともとはChatGPTと対話しながら少しずつ作り上げてきたものです。そのため、開発経験が豊富なエンジニアが最初から設計したような統一感のあるコードというよりは、その時々の課題を解決しながら継ぎ足しで育ててきた側面があります。今回公開するにあたって自分なりに見直しや整理は行いましたが、それでもまだ改善の余地は多く残っています。

ですので、導入がうまくいかなかったり、途中でエラーが発生したりしたとしても、あまり気にしないでいただければと思います。むしろ私自身もまだ発展途上の段階ですので、そのあたりはご容赦いただければ幸いです。今後も少しずつ改良を重ね、より導入しやすい形にしていきたいと思っています。

もし今後このようなツールを本格活用していきたいと考えているのであれば、まずは生成AIを使える環境を整えることから始めるのが良いと思います。特にClaude Codeは非常に強力で、単にコードを書いてくれるだけではなく、環境構築の相談相手にもなってくれます。例えば、「何が足りないために動かないのか」「何をインストールすればよいのか」といったことも含めて、一緒に確認しながら進めることができます。ある意味では、プログラミングの家庭教師のような存在と言ってもよいかもしれません。

もちろん月額費用はかかります。月額22$なので為替にもよりますが、月3,000〜4,000円程度の負担になることが多いと思います(2026年現在)。ただ、本格的に業務改善や自動化に取り組みたいと考えている先生であれば、その価値は十分にあるのではないかと思います。少なくとも私自身は、それ以上の価値を感じています。

今後は、このような業務改善ツールの紹介だけでなく、Claude Codeの導入方法や設定方法についても、もう少し詳しくご紹介していければと思っています。

まとめ

今回ご紹介した病名チェッカーは、もともと返戻を防ぎたいという非常に単純な動機から始まったものでした。しかし実際に作ってみると、単に病名漏れを防ぐだけではなく、「自分の業務を自分で改善できる」という大きな可能性を感じるきっかけになりました。もちろん、今回ご紹介した仕組みは決して完成形ではありません。私自身も現在進行形で改良を続けていますし、もっと良い方法もあると思います。それでも、実際に現場で毎日使われ、業務改善に役立っていることは事実です。

以前であれば、このようなツールを作ろうと思えば、専門のプログラマーに依頼するか、自分で何年も膨大な学習時間をかけて作成する必要がありました。しかし現在は生成AIの登場によって状況が大きく変わりました。もちろん多少の基礎学習は必要ですし、決して簡単なことばかりではありません。それでも、現場で困っている人自身が、自分の課題を解決するためのツールを作れる時代になったのだと思います。

また今回の病名チェッカーは、最初から完璧なものを目指して作ったわけではありません。まずは動くものを作り、実際に使いながら少しずつ改良してきました。個人的には、この「まず作ってみる」という気軽なトライが非常に重要だと思っています。

もしこの記事を読んで、「自分の診療所にも改善できる業務があるかもしれない」と感じていただけたのであれば、それだけでも十分価値があったと思います。そして、もし生成AIを活用しながら何か一つでも作ってみようと思っていただけたのであれば、これ以上嬉しいことはありません。

About the author この記事を書いた人:内科診療所の院長

IT企業でもコンサル会社でもなく、診療をしている開業医が、コードの作成から運用まで一人で行っています。取り上げるのは、実際に試して運用しているものだけです。

プロフィール →

Consultation

この記事のような仕組みを、先生の診療所でも。

運営者本人が伺って、電子カルテの自動化や集計ツールを導入し、先生ご自身で直し続けられる状態を目指します。まずは30分の事前オンライン相談から。

内容と料金を見る →
Related entries
  1. 013 電子カルテ自動操作ツールTampermonkeyの衝撃
  2. 013 日計集計ソフト開発の経緯と実際
  3. 013 Chrome拡張で業務サイトへのログインを自動化する
  4. 013 Tampermonkeyの具体例を動画で
開発の記事をすべて見る →
  1. 013 レセプト請求のUKEファイルから情報を取り出す
  2. 013 業務改善が進みすぎて、効率化しすぎて「やることがなくなる」という話」