電話予約をやめてWeb予約制に振り切ったことで得たこと

PUBLISHED 業務改善 #Web予約

電話予約をやめ、完全Web予約制へ移行したことで、受付業務や待ち時間、スタッフ負担、患者体験は大きく変化しました。実際に運用して感じた、Web予約化によるメリットやクリニック運営への影響について、現場ベースでまとめています。

当院は、いろいろな変遷を経て、現在はいわゆるWebからの完全予約制を採用しています。電話対応はもちろん、飛び込み受診についても原則として受け付けておらず、Web予約を取っていただいた上で来院していただています。もちろんこのような運用にすると、得られるものもあれば失うものもあります。また従来の電話予約や直接来院を前提とした診療体制とは、ターゲットとなる患者層も変わるため、向き不向きもあると思います。そのうえで今回は、「完全Web予約制に振り切ったことで、実際にどのようなメリットがあったのか」という点にフォーカスして、経験ベースでお話ししていこうと思います。

現状のクリニックの予約制度

いわゆる予約制を導入しているクリニックは増えています。精神科のように完全予約制を採用している診療科もありますが、多くの場合は、飛び込み受診と予約診療を並行して受けている形が一般的ではないかと思います。また、予約方法についても、電話予約とWeb予約を並行して運用しているクリニックが、現時点ではまだ多い印象があります。もちろん徐々に電話予約をやめて、Web予約へ移行するクリニックも増えてきています。ただ現状としては、電話で予約を受け、事務スタッフが患者さんの名前や生年月日を聞き取り、その場でカルテを作成するという流れを取っているクリニックも、依然として一般的ではないかと思います。Web予約システムや各種ITツールが普及してきた現在でも、こうしたアナログ寄りの運用は依然として残っているという印象です。

Web予約だけにしたことで変わったこと

当院も、いろいろな変遷を経て、現在はWeb予約のみという形に落ち着いています。この体制にして最も大きかったのは、心理的負担と事務負担が圧倒的に減ったことです。当院では、デジスマとデジカルを組み合わせて運用しているのですが、このシステムの恩恵は大きいと感じています。例えば、患者さんがWebから予約を取ると、初診の患者さんであっても、予約が入った瞬間にカルテ1号用紙が自動で作成されます。名前、生年月日、住所、電話番号といった情報が反映された状態で、受付画面に即座に表示される仕組みです。また、再診患者さんについては、過去のカルテ情報を自動で紐づけたうえで受付に反映されます。そのため、「電話で情報を聞き取って入力する」という作業そのものがほぼ不要になり、受付業務は本当に大きく効率化されました。

人間が介在すると、どうしても一定割合で入力ミスは起こります。名前の漢字、生年月日、電話番号など、忙しい受付業務の中ではどうしても避けきれない部分があります。しかし、人間を介さず、患者さん自身に入力していただく形に変えたことで、そうした事務的なミスは大幅に減りました。もちろん、患者さん自身が生年月日を入力し間違えるようなケースはゼロではありませんが、それもWeb会員登録が済んでしまえば、ほぼ起こらなくなります。結果として、生産性はかなり向上しました。極端な話をすると、完全に初めての初診患者さんが来院1分前に予約を取った場合でも、通常通り問題なく受付対応ができるレベルになっています。

電話が苦手な人が来院するようになった

これは実際にやってみて、個人的には少し意外だったことでもありますが、電話予約が苦手な方が一定の割合で来院するようになりました。世の中には、病院の予約を電話で取ること自体に、心理的な負担を感じる人が一定数います。実は私自身も、どちらかというと電話があまり得意ではないタイプなのですが、そういう感覚を持っている方は思っている以上に多いのではないかと感じています。実際、当院でも、「Web予約だったから受診できた」という患者さんが一定数いらっしゃいます。おそらく、電話予約のみだった場合には、受診まで至らなかったであろう方も含まれていると思います。理由としては、単純に電話というコミュニケーション自体が苦手という方もいますし、音声でのやり取りに強いストレスを感じる方もいます。当院では、予約だけではなく、問診も含めてWeb上で完結できる仕組みにしているため、「クリニックに受診をする」というハードル自体を下げることができています。その結果として、これまで受診につながりにくかった層の方が来院されるようになった、という実感があります。

一度「待たされない経験」をすると、他院に戻れなくなる

予約制、特に完全予約制の場合、基本的に待ち時間はほとんど発生しません。もちろん、どうしても患者さんが重なってしまうことはありますが、それでも当院では10分以上お待たせするケースはあまり多くありません。一方で、一般的なクリニックでは、予約をしていても30〜40分、場合によっては1時間近く待つことは、今でも珍しくないと思います。そうした中で、一度「ほとんど待たされない」という体験をした患者さんは、やはり満足度がかなり高いように感じています。実際、そのような体験をされた患者さんが、待ち時間の長い他院へ戻っていくかというと、あまりそういう印象はありません。気に入ってくださった方は、そのまま継続して通院されるケースが多いように感じています。

もちろん、これは単純に予約システムだけの問題ではありません。当院では、会計についてもデジスマ診療などを活用して簡略化しているため、診察後もほとんど待ち時間なく帰宅できる体制になっています。結果として、「診察を受けるために半日潰れる」という感覚が減ります。一度この快適さを経験すると、長時間待つことが当たり前の医療機関には、なかなか戻りにくくなるのではないかと感じています。

電話対応に人員を割かなくてよくなった

電話予約を中心に運用している場合、どうしても電話対応のためにスタッフのリソースを割かなければならなくなります。特に外来が混雑している時間帯などは、受付業務をしながら電話を取り続ける必要があり、実質的に「電話対応要員」が必要になっているクリニックも多いのではないかと思います。つまり、クリニック側としては、電話対応を維持するために人件費を負担している側面があるわけです。もちろん、予約システムやオンライン決済システムには導入コストや月額費用がかかります。しかし、電話対応のために常時スタッフを1人配置することを考えると、システムコストのほうが大幅に低いケースは多いと思います。特に現在は、最低賃金の上昇も含め、人件費は年々上がり続けています。そのため、「人がやらなくてもよい業務をどこまでシステム化するか」という視点は、今後さらに重要になっていくのではないかと感じています。

また、コストという意味は、単純なお金の問題だけではありません。スタッフ側の心理的負担を減らすという意味でも、電話対応削減のメリットは大きいと思います。先ほど、「電話が苦手な患者さんが一定数いる」という話を書きましたが、実はこれはスタッフ側も同じです。電話対応そのものに強いストレスを感じる方は少なくありません。実際、電話対応が苦手だったり、精神的負担になっていたりするケースは意外と多く、それが離職理由の一つになることもあります。

電話対応を減らすことで、事務スタッフの負担は確実に軽減されます。その分、他の業務へリソースを回すことができますし、スタッフ満足度や定着率の向上にもつながります。スタッフ採用や教育には、当然ながら大きなコストがかかります。つまり、スタッフが辞めにくくなること自体が、結果的にはクリニック経営の安定化やコスト削減につながるわけです。その意味でも、Web予約やオンライン決済の導入というのは、単なる「便利ツール」ではなく、クリニック運営全体を改善する仕組みとして、大きな意味を持っていると感じています。

まとめ

もちろん、すべてのクリニックが完全Web予約制に向いているわけではありません。診療科や地域性、高齢者層の割合などによっても、最適な形は変わってくると思います。ただ、実際に当院で運用してみると、単純に予約を便利にするというだけではなく、受付業務、待ち時間、スタッフ負担、患者満足度など、クリニック運営全体に大きな影響があることを実感しています。特に現在は、人件費の上昇や人材確保の難しさもあり、「人がやらなくてもよい作業をどこまで減らせるか」という視点は、今後さらに重要になっていくのではないかと思います。

もちろん、電話対応だからこそ安心できる患者さんもいらっしゃいますし、すべてを一気に切り替えるのは難しい部分もあります。ただ、少なくとも「電話予約が当たり前」という前提自体は、これから少しずつ変わっていくのではないかと感じています。Web予約やオンライン決済などを組み合わせることで、患者さん側の体験も、スタッフ側の働きやすさも、変わります。実際に運用してみると、単なるIT化というより、「診療所のあり方そのものが変わる」という感覚に近いのかもしれません。

About the author この記事を書いた人:内科診療所の院長

IT企業でもコンサル会社でもなく、診療をしている開業医が、コードの作成から運用まで一人で行っています。取り上げるのは、実際に試して運用しているものだけです。

プロフィール →
Related entries
  1. 009 業務改善が進みすぎて、効率化しすぎて「やることがなくなる」という話」
  2. 009 メールの文面をなげる
  3. 009 レセプト請求のUKEファイルから情報を取り出す
  4. 009 音声入力と生成AIは相性がとても良い
業務改善の記事をすべて見る →
  1. 009 Chrome拡張で業務サイトへのログインを自動化する
  2. 009 電子カルテ自動操作ツールTampermonkeyの衝撃