情報の少ない総合診療専門医試験の対策に、Claude Codeで苦手ノートを整理し、そこから5択の模擬問題をブラウザで解ける形で作らせた勉強法を紹介します。
今回は、クリニックの運営とは直接関係のない話題をご紹介したいと思います。当サイトでは、生成AIを活用したクリニックの業務改善を一つのテーマとして取り上げていますが、生成AIの活用範囲は、もちろん業務改善だけにとどまりません。例えば、気になっているアーティストの出演情報やコンサート情報を週に1回チェックしてもらい、新しい情報があれば教えてもらうこともできます。また、日々の献立に困ったときに相談するなど、日常生活のちょっとした場面でも生成AIを活用する機会が増えてきました。仕事だけでなく、私生活においても生成AIを利用することが珍しくなくなっています。
今回は、そんな生成AIを「勉強」に活用してみた経験についてご紹介したいと思います。実は、2026年に急遽、総合診療専門医試験を受験することになり、その試験対策に生成AIを利用してみました。せっかく生成AIについて日頃から情報発信しているのですから、従来の勉強法を繰り返すのではなく、生成AIを活用した現代の勉強法を試してみようと考えたわけです。実際に取り組んでみると、想像していた以上に便利な部分がありましたので、その経験を共有したいと思います。
急遽、総合診療専門医試験を受験することに
私はすでに別の専門医資格を取得していたのですが、新専門医制度の整備に伴って設けられた総合診療専門医については、これまで特に取得を考えていませんでした。総合診療専門医は、従来の臓器別専門医とは異なり、幅広い健康問題に総合的に対応できる医師の養成を目的とした、比較的新しい専門医制度です。ところが、たまたま制度について調べていたところ、移行措置によって私にも受験資格があることが分かりました。この移行措置もいずれ終了することになっているため、せっかく資格があるのなら、一度受験してみようかと考えたわけです。
ただし、この総合診療専門医試験には、一つ大きな問題がありました。それは、試験対策に関する情報が非常に少ないということです。総合診療専門医試験は、制度自体の歴史がまだ浅く、試験が実施された回数も限られています。また、臓器別の専門医と比較すると、この専門領域を選択する先生の数もまだ少ない印象があります。そのためか、試験に関する情報があまり出回っておらず、少なくとも私が調べた範囲では、一般的な専門医試験と同じような対策を立てることが難しい状況でした。例えば、内科専門医試験であれば、さまざまな対策本や問題集が出版されていますので、それらを利用して試験勉強を進めることができます。しかし、総合診療専門医試験については、実践的な対策問題集がほとんど見当たりませんでした。試験に関連するテキストは存在するようなのですが、カリキュラムや学習内容の指針を示すものが中心で、問題演習を行うための教材としては十分ではありませんでした。
さらに困ったことに、過去問題も公開されていません。少なくとも私が受験した時点では、どのような問題が出題されるのかを具体的に把握することが非常に難しく、まるで神秘のベールに包まれているような試験でした。こうなると、実際に受験した先生から情報を聞くという方法が考えられます。しかし、私の周囲には総合診療専門医試験を受験した先生がおらず、そもそも開業してからは他の医師との交流もかなり少なくなっています。そのため、人づてに情報を集めることも難しく、どうしたものかと途方に暮れていました。
仕方がないので、インターネットでさまざまな情報を検索していたところ、幸運にもAmazonのKindleで総合診療専門医試験の対策問題集を発見しました。私自身もKindleで書籍を出版しているのですが、同じように個人出版という形で、ある先生が総合診療専門医試験に関する問題集を制作してくださっていたのです。これは本当に助かりました。私が受験した時点では、その先生が出版されていた問題集が3冊あり、実際の試験対策はほとんどこの3冊だけで行いました。私が探した限りでは、ほかに実用的な問題集を見つけることができず、事実上、この問題集を頼りに勉強を進めるしかなかったという状況です。(※この記事を書いている時点では、この問題集はKindleストアで見当たらなくなっているようです)加えて、開業医として日々の診療を行いながらの勉強ですので、まとまった時間を確保することも簡単ではありません。限られた時間の中で、できるだけ効率よく学習を進める必要がありました。
生成AIを活用して、自分専用の苦手ノートを作る
そこで考えたのが、生成AIを活用した勉強法です。従来であれば、問題集を解き、分からなかったところを調べ、自分でノートにまとめ、それを繰り返し読んで覚えるという方法を取っていたと思います。実際、学生時代や以前の専門医試験では、そのような方法で勉強していました。しかし、今回はせっかく生成AIを利用できる環境があり、自分でも生成AIを使ってサイトを制作したり、さまざまな情報発信を行ったりしているのですから、従来とは異なる方法を試してみようと考えました。
ここで役立ったのが、問題集がKindleの電子書籍だったという点です。まずは、購入した問題集をひたすら解いていきます。すでに理解している問題や、自分が得意としている分野については、あまり時間をかけずに先へ進みます。一方で、間違えた問題や、自分が知らなかった知識、覚えておく必要があると感じた内容については、解説を確認しながら別のノートに集めていくことにしました。この問題集は解説が非常に丁寧で、自分が知らなかった知識を整理するうえでも役立ちました。そこで、必要な部分をコピーしてノートに貼り付け、場合によっては問題そのものも記録していきました。つまり、昔からある「間違いノート」を電子的に作るという方法です。
具体的には、Markdown形式のファイルを一つ作成しました。Markdownは、拡張子が「.md」のテキストファイルで、特別なソフトウェアがなくても編集できます。一般的なテキストファイルでもよいのですが、今回利用したClaude CodeではMarkdown形式のファイルを扱いやすいため、この形式を選択しました。このファイルに、自分が知らなかったこと、間違えたこと、覚えておきたいことなどを、ひたすらコピー&ペーストしていきます。この段階では、内容を整理する必要はありません。分野が混在していても、文章が多少途切れていても、気にせずどんどん放り込んでいきました。
ある程度の情報が集まったところで、Claude Codeに対して、このファイルは自分が間違えた問題や苦手な知識を集めた雑記ノートなので、分野別に整理して、復習しやすい形にまとめてほしいと指示しました。すると、これが非常にうまく機能しました。単に文章を並べ替えるだけでなく、関連する内容を一つにまとめたり、前後関係が分かりやすくなるように編集したりしてくれます。例えば、細菌のグラム染色による分類など、一覧にした方が覚えやすい内容については、表形式にまとめることも自動で行ってくれました。雑然としたメモを渡すだけで、見やすいまとめノートを作成してくれるわけです。
やっていること自体は、従来の勉強法と大きく変わらないのかもしれません。しかし、ノートを作るための手間が圧倒的に少なくなりました。これまでは、自分で分野を分類し、文章を書き直し、必要に応じて表を作り、見やすい形に整理する必要がありました。それらの作業を、生成AIが代わりに行ってくれるようになったのです。また、手書きのノートとは異なり、後から情報を追加したり、不要な内容を削除したりすることも簡単です。勉強を進める中で新しい知識が出てきた場合も、とりあえずファイルに追加しておけば、生成AIが適切な場所に整理してくれます。関連する知識が増えても、ノート全体の構成を見直すことができるため、非常に柔軟に運用できました。
こうして、3冊の問題集を一通り解きながら、間違えた内容や苦手な知識をどんどん蓄積し、その都度Claude Codeに整理してもらうという作業を繰り返しました。最終的には、一つのMarkdownファイルを読めば、自分が苦手としている分野や、覚えておく必要がある知識を一通り復習できる状態になりました。いわば、自分専用の総合診療専門医試験対策ノートです。しかも、このノートを作成するために私が行った作業は、基本的には問題を解き、必要な内容をコピー&ペーストすることだけです。ノートの編集や整理に費やす時間が大幅に減ったため、非常に短期間で自分専用の学習資料を作ることができました。
本当に便利だったのは、生成AIに問題を作らせること
こうして苦手ノートが完成したわけですが、次に考えたのは、このノートをどのように活用するかということでした。最初は、従来どおりノートを繰り返し読み、知識を頭に叩き込んでいこうと考えていました。しかし、医学部を卒業してから10年以上が経過し、学生時代と比較すると、記憶力が落ちてきたことを実感しています。以前であれば比較的簡単に覚えられた内容でも、なかなか頭に入ってこないのです。さらに、今回の試験勉強には時間的な制約もありました。恥ずかしい話ですが、本格的に勉強を始めたのは試験の約1か月前です。つまり、作成したノートを最初から最後まで何度も読み返し、時間をかけて暗記するという方法では、試験までに間に合わない可能性がありました。せっかく生成AIを使って立派なノートを作ったものの、このままでは宝の持ち腐れになってしまうのではないかと感じたわけです。
そこで思いついたのが、この苦手ノートに書かれている内容を、生成AIに試験問題として出題してもらうという方法でした。最初は単純に、Claude Codeに対して「このノートの内容から20問の試験問題を作成してください」と指示しました。すると、ノートに記録された知識をもとに、さまざまな問題を作成してくれます。ただし、問題形式を指定しない場合、穴埋め問題や記述式問題など、いろいろな形式が混在してしまいます。もちろん、それはそれで勉強になるのですが、今回の目的は総合診療専門医試験に合格することです。実際の試験は5択の選択式問題で、正しいものや誤っているものを一つ選ぶ形式のほか、二つ、三つを選ぶ形式も出題されます。そこで、出題形式を本番の試験に合わせ、5択問題に限定することにしました。
方針が決まれば、あとは簡単です。Claude Codeに対して「このノートから5択問題を20問作成してください」と指示すると、私の環境ではおおむね1〜2分程度で問題を作成してくれました。しかも、出題されるのは、もともと自分が間違えたり、理解が不十分だったりした内容です。自分の苦手分野を集中的に復習できるという点で、非常に効率的でした。もちろん、元のノートに記載された知識の範囲内にはなりますが、自分で問題を考えたり、類題を探したりする必要がなくなるというだけでも、非常に大きな変化だと感じました。
Google Chromeで回答できる模擬問題に発展
最初は、生成された問題を普通に読み、自分で回答を記録しながら採点していました。しかし、何度か繰り返すうちに、もう少し効率化できるのではないかと考えるようになりました。それなら、実際の試験と同じように、Google ChromeなどのWebブラウザ上で選択肢をクリックして回答できる形式にすればよいのではないかと思ったわけです。そこでClaude Codeに、問題を作成する際にはブラウザ上で回答できるようにし、選択肢をクリックした瞬間に正誤判定と解説を表示する形式にしてほしいと指示しました。これも、問題なく実現できました。
すると、単純に問題を解くだけでなく、1問回答するごとに採点結果と解説を確認できるようになります。正解であればそのまま次の問題へ進み、間違えていれば解説を読み直します。さらに、忘れている知識や理解が曖昧な部分があれば、元のMarkdownファイルに戻り、該当する項目をもう一度確認するという流れです。必要に応じて追加で調べたり、覚えやすいようにノートの内容を補足したりすることもできました。単に問題を解いて終わるのではなく、問題演習を通じて苦手な知識を確認し、その結果を再び自分のノートに反映するという学習方法ができあがったわけです。
また、20問単位での問題演習に慣れてきたところで、さらに出題形式を工夫するようになりました。例えば、症例を提示して診断や検査、治療方針を選ばせる問題や、一つの症例に対して複数の設問が続く連問形式の問題です。総合診療専門医試験では、単純な知識だけでなく、臨床的な判断を問うような問題も出題されますので、こうした形式にも対応できるようにしました。さらに、正しいものを選ぶ問題だけでなく、誤っているものを選択する問題や、適切な検査を選択する問題など、実際の試験で見られる特徴的な問い方も取り入れました。問題集に記載されている出題形式や言い回しも参考にして、できるだけ本番を意識した演習ができるように調整していったわけです。
もちろん、生成AIが作成した問題が実際の試験と同じ難易度や品質になるとは限りませんし、正答や解説に誤りが含まれる可能性もあります。そのため、疑問に感じた内容については元の問題集や参考資料に戻って確認する必要があります。ただ、自分が苦手としている知識を繰り返し確認するための練習問題としては、非常に役立ちました。この方法であれば、診療の合間にも勉強を進めることができます。少し時間ができたときに「もう20問作ってください」と指示すれば、新しい問題を作成してもらえます。あとはブラウザ上で問題を解き、分からなかったところを確認し、必要があればノートに戻って復習する。この作業をひたすら繰り返しながら、実際の試験当日を迎えました。私はこの方法で20問ずつ、40回ほどの演習を行い、合計で約800問を解きました。ここまで繰り返すと、苦手だった内容もおおむね頭に入ってきます。
生成AIによって勉強の効率が大きく変わる
今回の勉強法を試してみて、学生時代にこのような環境があれば、ずいぶん便利だっただろうと感じました。特に良かったのは、自分が苦手としている知識をもとに、繰り返し新しい問題を作ってもらえるという点です。ノートを読むだけでは、理解したつもりになっていても、実際に問題として出題されると答えられないことがあります。しかし、問題を解くという形で知識を確認すると、自分が本当に覚えているのかどうかが明確になります。医学部では、先輩から受け継がれるノートや過去問題などが、試験対策において重要な役割を果たしていたと思います。しかし、過去問題以外に新しい問題を作ったり、特定の苦手分野に絞って類題を大量に用意したりすることは、これまでは簡単ではありませんでした。今回、生成AIを利用してみて、その部分が大きく変わるのではないかと感じました。
例えば、ある問題を間違えた場合、その問題に関連する知識を整理したうえで、類似した問題を5問作ってもらうこともできます。さらに、問題の角度を変えたり、症例を変えたりして繰り返し出題してもらえば、一つの知識をさまざまな方向から確認できます。従来であれば、類題が掲載されている問題集を探したり、自分で問題の条件や数値を変更したりする必要がありました。しかし、生成AIを利用すれば、そうした作業を短時間で行うことができます。これまで人間が相当な時間をかけて行っていた作業を、生成AIが代わりに行ってくれるようになったというのは、学習方法における大きな変化だと思います。
もちろん、大学受験のように大量の問題集や参考書が存在し、試験対策の方法が十分に確立されている分野では、今回の方法が必ずしも従来の学習法を上回るとは限りません。市販の良質な問題集を解いた方が、効率的な場合もあると思います。しかし、私が今回受験した総合診療専門医試験のように、公開されている情報が少なく、自分で対策を立てる必要がある試験では、このような方法は非常に有効だと感じました。また、医学部の学内試験など、特定の範囲から出題される試験についても、同じような方法を応用できるのではないかと思います。特に、自分が間違えた問題や苦手な知識だけを抽出し、生成AIにノートとして整理してもらい、そこから実践形式の問題を繰り返し作成するという一連の流れは、今後の勉強法の一つとして十分に活用する価値があると感じています。
勉強や授業のあり方も変わっていくのではないか
今回の経験を通じて、生成AIは今後、勉強の方法そのものを大きく変えていくのではないかと感じました。すでに大学受験の分野では、スタディサプリのような定額制の動画授業サービスが普及していますし、YouTubeでも質の高い授業を無料で視聴できる時代になっています。以前であれば、予備校や学習塾に通わなければ受けられなかったような授業が、今では自宅から簡単に受けられるようになりました。ただ、問題集を解いていて分からないことがあったときに、そこで学習が行き詰まってしまうという問題は、動画形式の授業だけでは十分に補えなかった部分だと思います。そこに今回のような生成AIが加わることで、類題を作ってもらったり、苦手な分野の解説をより詳しくしてもらったりと、従来の学習方法を補完できるようになりました。まさに「鬼に金棒」ともいえる状況なのではないかと思います。
例えば、動画授業を見て、市販の問題集を解き、間違えた問題を生成AIに共有します。そして、その問題に関連する類題を5問作ってもらい、繰り返し解いていく。理解が不十分であれば、再び解説をしてもらったり、別の角度から問題を出してもらったりすることもできます。これまで、こうした個人の理解度に応じた問題を用意するためには、それなりの手間がかかっていました。しかし、生成AIを使えば、必要な問題をその場で作ることができます。学習塾などの教育現場では、すでに同様の取り組みが進んでいるのではないかと思いますが、実際に自分で試してみると、その便利さを改めて実感しました。
今回、私が行ったことは、特別に高度なプログラミングを利用したわけではありません。問題集を解いて、間違えた部分をノートに集め、それを生成AIに整理してもらい、さらに問題として出題してもらっただけです。それでも、従来であれば相当な時間がかかっていた作業を、短時間で行うことができました。こうした体験をすると、今後は勉強の方法だけでなく、授業のあり方そのものも少しずつ変わっていくのではないかと感じます。生成AIは、仕事の効率化だけでなく、勉強や日常生活のさまざまな場面にも入り込んできています。ここ1〜2年だけを振り返っても、できることが驚くほど増えました。今まさに、産業革命にも匹敵するような大きな技術的変化の過渡期にいるのではないかと、改めて感じています。
まとめ――専門医試験以外にも応用できる勉強法
今回は、総合診療専門医試験の勉強に生成AIを利用してみた経験についてご紹介しました。当サイトをご覧になっている先生方は、すでに開業されている先生が多いと思いますので、今回の内容が直接役立つ機会はそれほど多くないかもしれません。すでに専門医資格を取得されている先生も多いでしょうし、更新のたびに筆記試験が必要になる専門医資格も、それほど多くはないと思います。ただ、私のように制度の移行措置によって新たな専門医の受験資格が得られ、これから試験勉強を始めようと考えている先生にとっては、一つの参考になるのではないかと思います。また、今回ご紹介した方法は、必ずしも専門医試験に限ったものではありません。医学知識の復習や新しい分野の勉強など、自分が理解できていない内容を整理し、繰り返し確認したい場面であれば、幅広く応用できると思います。
今回、特に印象に残ったのは、生成AIを単なる質問相手として使うのではなく、自分専用の問題集を作成してくれる道具として使えたことでした。自分の苦手な知識を集め、ノートを整理してもらい、その内容から新しい問題を作ってもらう。実際に試してみると、これまでの勉強法と比べて、学習資料を作るための負担が大きく減ったことを実感しました。生成AIを使った勉強法は、まだまだ工夫の余地があると思います。今回の経験が、これから何らかの試験勉強に取り組む先生方の参考になれば幸いです。