7〜8年日記を続けてきた開業医が、音声入力で20分話した内容をChatGPTに整えてもらい、今の自分の状態を分析してもらう方法を紹介します。うまくいかない時期の振り返りに役立ちます。
音声入力なら、考えがまとまっていなくても文章にできる
今回は、音声入力と生成AIを使って日記を書き、自分自身の人生や現在の精神状態を振り返るという方法についてご紹介したいと思います。これは、つい先日私自身が試してみて、思いのほか良い方法だと感じたため、さっそく記事にしてみようと思ったものです。特別に新しい技術を使うわけでも、難しいことをするわけでもありません。ただ、普段から音声入力や生成AIを使っている先生であれば、ぜひ一度試していただきたい方法です。
まず、音声入力の大きな利点は、文章を書くことへの心理的なハードルが非常に低くなるという点です。タイピングで長い文章を書くというのは、意外と労力を使うものです。ブラインドタッチで非常に速く入力できる先生もいらっしゃると思いますが、それでも普通に話すことと比較すると、音声入力の方が速い場合も多いのではないでしょうか。何より、タイピングの場合はある程度文章の構成や考えが固まってから入力を始めることが多いのに対し、音声入力であれば、まだ考えがまとまっていない段階から話し始めることができます。
話している途中で同じことを何度も繰り返してしまったり、冗長な表現になったりしても、それほど気にする必要はありません。前後関係がおかしくなったり、途中で話題が変わってしまったりしても、後から生成AIに文章を整えてもらえばよいからです。きれいな文章を書こうと意識する必要がなく、とりあえず思いついたことを話していけばよいという気軽さは、音声入力ならではの大きな魅力です。
音声入力ソフトについては、私は普段からAqua Voiceをおすすめしていますが、MacやWindowsに標準搭載されている音声入力機能でも十分だと思います。ただし、マイクについては、できれば1万円程度のものでもよいので、ある程度きちんとした製品を購入することをおすすめします。音声の拾いやすさが変わるため、音声入力を頻繁に利用するのであれば、導入する価値は十分にあります。
音声入力は、記事を書く場合だけでなく、カルテの記載や、患者さんとの会話を生成AIで整理する仕組みなど、診療や業務改善にも幅広く利用できます。ただ、今回おすすめしたいのは、もう少し個人的な使い方です。それが、自分自身の日記を書くというものです。
私が日記を書き始めたきっかけ
私は以前から日記をつける習慣があります。正確にいつから始めたのかは少し曖昧なのですが、最初のきっかけは、休職していた時期に日記を書いてみようと思ったことでした。当時は精神的にもかなり落ち込んでいた時期で、今の自分が何を考えているのか、どのような気持ちで毎日を過ごしているのか、そして何をしていたのかを、後から客観的に振り返れるようにしておこうと思ったのです。なぜそのように考えたのかは、今となってはよく覚えていませんが、結果として数か月分の日記を残すことになりました。
そもそも、人間は自分が思っている以上に過去のことを忘れてしまうものです。私の場合、日記を1週間ほど書き忘れると、1週間前に何をしていたのか、ほとんど思い出せないことも珍しくありません。カレンダーや写真、LINEのやり取りなどを見返して、ようやくその日に何をしていたのか思い出すこともあります。これは今でも変わりません。しかし、日記として残しておくと、数年後に読み返したときに、当時の出来事だけでなく、そのとき自分が何を考えていたのかまで思い出すことができます。「この頃はこんなことを考えていたのか」と、懐かしく感じることも少なくありません。
休職中に書いていた日記も、その後復職してしばらく経った頃、何かのきっかけで読み返す機会がありました。それをきっかけに、また日記をつけてみようと思い、そこから現在まで、かれこれ7〜8年ほど日記を書く習慣が続いています。毎日きっちりと長文を書いているわけではありません。本当に一言しか書かない日もあれば、自分の内面をじっくり振り返り、非常に長い文章になる日もあります。
日記を書き始めた当初は、普通にキーボードで入力していました。しかし、普段の仕事で音声入力を利用するようになってからは、日記も音声入力に切り替えました。実際に切り替えてみると、こちらの方がはるかに楽で、以前よりもしっかり記録を残せるようになったと感じています。それでも書き忘れてしまう日や、一言だけで終わる日もありますが、少なくとも長い文章を書くことへの抵抗感はかなり小さくなりました。
20分ほど、思いつくままに話してみる
日記をつけていると、たまに自分自身のことをじっくり振り返りたいと思う日があります。そういうときは、パソコンに向かって20分ほど、思いつくままに話し続けることがあります。音声入力なので、途中で同じことを繰り返したり、話の前後関係がおかしくなったり、入力ミスが混じったりすることもありますが、あまり気にせず、とにかく話したいことを話していきます。20分も話せば、かなりの長文になります。
そして、その文章をChatGPTに貼り付けて、読みやすく整えてもらいます。私の場合、最初は単純に音声入力の誤変換や不自然な表現を修正してもらうという使い方でした。文章を整えてもらう際には、できるだけ元の内容を残してもらい、話の流れや段落構成を整理してもらいます。生成AIに任せると、一文ごとに改行された細切れの文章になってしまうこともあるため、その場合はもう少し意味のある段落の塊にまとめてもらいます。そうすると、脈絡なく話していた内容が、ある程度まとまった読みやすい文章になるわけです。
これだけでも、十分に意味があります。自分の中で何となくモヤモヤしていたことや、うまく言葉にできなかったことを、とりあえず音声入力で吐き出してみる。そして、それを生成AIによって一つの文章にまとめてもらい、自分で読み返してみるのです。自分が話した内容であるにもかかわらず、文章として整理されることで、改めて気づくこともあります。誰かに読ませるための文章ではありませんから、きれいな表現を意識する必要もありません。なお、日記には家族やスタッフ、ときには患者さんのことが出てくることもあります。貼り付ける前に、ChatGPTの設定で会話の内容をモデルの学習に使わないようにしておくことと、個人が特定できる書き方を避けることをおすすめします。
生成AIに「今の自分をどう思うか」と聞いてみる
ここまでは以前から実践していた方法なのですが、つい先日、ふと思いついて少し違う使い方を試してみました。日記をChatGPTに整えてもらった後で、「この日記を読んで、今の私の状態をどう思いますか」「客観的に見て、今の私はどのような状況にあると思いますか」と聞いてみたのです。
すると、思っていた以上に真面目に分析してくれました。単純に文章の内容を要約するのではなく、これまで自分が取り組んできたことや、現在感じている不満、なぜモヤモヤしているのかといった部分について、ある程度整理して説明してくれたのです。その中には、自分自身でもうまく言語化できていなかった感覚を、言葉にしてもらえたと感じる部分がありました。
例えば、いろいろなことに取り組んできて、決して何もできていないわけではない。それでも、なぜか自分自身では満足できていないのではないか、というような指摘です。生成AIの分析は、こちらの話した内容から推測しているにすぎません。それでも、自分では整理できなかった感情を別の言葉で表現してもらうことで、「確かにそういう部分があるのかもしれない」と気づくことがありました。
これは、思いのほか面白い体験でした。もともとは日記の文章を校正してもらうために使っていた生成AIが、自分自身を振り返るための壁打ち相手にもなったわけです。普段から生成AIをさまざまな業務に利用している私ですが、この使い方は、これまであまり意識していませんでした。実際に試してみて、これはほかの先生にもおすすめできるのではないかと感じたのが、今回の記事を書こうと思ったきっかけです。
物事がうまくいかないときこそ、振り返ってみる
自分自身を振り返りたいと思う場面は、いろいろあると思います。例えば、仕事が非常にうまくいっているときに、そのときの考え方や経験を記録として残しておくことにも意味があります。しかし、私自身は、むしろ物事があまりうまくいっていないときの方が、こうした振り返りの価値が大きいと感じています。
例えば、自分なりに一生懸命頑張っているのに、なかなか成果が出ないときです。思いつく限りのことは一通り実践しているつもりなのに、期待していたような結果につながらない。あるいは、まだやるべきことがあるのは分かっているものの、なぜか手がつかなくなってしまっている。人生が少し停滞しているように感じたり、行き詰まってしまったりする時期は、誰にでもあるのではないでしょうか。
そういうときに、無理に前向きな文章を書こうとする必要はありません。例えば、「最近は少し疲れてしまった」「今日は何もやる気がしない」「もう全部やめてしまいたい」といった気持ちがあれば、それも含めて、そのまま話してしまえばよいのです。音声入力であれば、言葉を選んで文章を組み立てる必要はありません。何となくモヤモヤしている気持ちを、とりあえず思いつくままに口に出すだけでも十分です。
私の場合、最初はあまり話すことが思いつかなくても、しばらく話しているうちに、だんだん気分が乗ってくることがあります。最近の出来事を振り返ったり、開業してからこれまでどのようなことに取り組んできたのかを思い出したり、逆に何ができていなかったのかを考えたりするようになります。話している内容は必ずしも論理的ではなく、話題があちこちに飛んでしまうこともありますが、それで構いません。後から生成AIに整理してもらえばよいのです。
そうして出来上がった文章を自分で読み返すだけでも、意外と振り返りになります。さらに、その文章を生成AIに分析してもらうことで、少し違った視点から自分の状況を見られることもあります。ただし、眠れない、何も手につかない、気持ちの落ち込みが続くといった状態のときは、生成AIに頼るのではなく、主治医や専門家に相談してください。この方法が向いているのは、何となくうまくいかない、少し煮詰まっている、自分の状況を客観的に整理してみたいという場面です。そうしたときには、試してみる価値のある方法だと感じています。
以前は、自分自身をビデオに撮影していた
実は、こうして文章を書きながら思い出したのですが、私は以前、これと似たようなことを別の方法でも実践していました。それが、自分自身が話している様子をビデオに撮影するという方法です。特別な撮影機材を使うわけではなく、iPhoneのインカメラを使って、自分が話している様子をそのまま録画するというものです。
やり方は非常に単純で、iPhoneを自分の前に置き、今考えていることや不安に思っていることなどを、気が済むまでひたすら話し続けます。時間にすると20〜30分程度でしょうか。動画の画質などはどうでもよいので、容量を節約するために画質も落としていました。誰かに見せるための動画ではありませんから、特に話す内容を準備することもなく、そのとき考えていることをひたすら話すだけです。
例えば、クリニックの経営が今後どうなっていくのか、これからどうしていけばよいのか、借金の返済が大変だ、お金がない、将来が不安だ、といったことも話していたと思います。特に精神的に大変だったのは、新型コロナウイルス感染症が流行していた頃でした。コロナ関連の補助が減ってしまったらどうするのか、これから経営がどうなるのか、明日からどうすればよいのか。そういった不安を、一人でカメラに向かって話していた記憶があります。
一時期、YouTubeなどでVlogという形式の動画が流行しましたが、私がやっていたことは、それを自分自身のためだけに行う、いわばセルフVlogのようなものでした。誰かに公開するつもりもありませんし、そもそも後から見返すことすら、ほとんどありませんでした。自分が20〜30分も話している動画を、わざわざ同じ時間をかけて見返すのは、正直なところ面倒だからです。
それでも、不思議なことに、カメラに向かってひたすら話し続けるだけで、ある程度気持ちが晴れることがありました。別に誰かが聞いてくれるわけでも、何か具体的な解決策が見つかるわけでもありません。それでも、自分の中にある不安や不満を一度外に出すことで、多少なりとも気持ちが整理されていたのだと思います。今振り返ってみると、あれも一つの自己分析の方法だったのかもしれません。しばらく実践していませんでしたが、今回の記事を書いていて、そんなことをしていた時期があったのを思い出しました。
ビデオよりも、音声入力とテキストの方が振り返りやすい
このセルフVlogのような方法も、悪くありませんでした。現在でも試してみる価値はありますし、音声入力と組み合わせることもできるでしょう。ただ、後から振り返ることを考えると、私はやはりテキストとして残しておく方が便利だと感じています。
その理由は、単純に読む方が速いからです。20〜30分の動画を見返そうと思えば、基本的にはそれなりの時間が必要になります。しかし、同じ時間に話した内容でも、テキストにしてしまえば、流し読みするだけならそれほど時間はかかりません。普段からカルテや医学文献などを大量に読んでいる先生であれば、文章を読むことには慣れている方も多いと思います。必要な部分だけを拾い読みすることもできますし、何年か後に振り返る場合にも、テキストの方が扱いやすいのではないでしょうか。
さらに、生成AIに文章を整えてもらったり、内容を分析してもらったりできる点も大きな違いです。単純に気持ちを吐き出すだけであれば、ビデオに向かって話す方法でも十分です。しかし、その内容を後から読み返したり、整理したり、客観的に振り返ったりすることまで考えると、音声入力で日記を残しておく方法の方が、私には合っているように感じます。
誰かに話すことと、生成AIに話すことの違い
もっとも、今回ご紹介した方法は、決して特別に新しいものではありません。考えてみれば、仕事で行き詰まったときに友人に愚痴を言ったり、家族に悩みを聞いてもらったりすることと、本質的にはそれほど変わりません。人に話を聞いてもらうだけで、何となく気持ちが整理されるという経験は、多くの先生にあるのではないでしょうか。今回の方法は、そうしたことを一人で行い、さらに生成AIを壁打ち相手として利用するというものです。
ただ、実際に人に話すとなると、相手との関係や自分の立場を考えなければならない場面も少なくありません。特に開業医の場合、クリニックの経営やスタッフとの関係、将来への不安などについて、何でも気軽に話せる相手がいるとは限りません。同じ医師の友人であっても、立場が違えば話しにくいこともありますし、家族に対しても、あまり不安や愚痴ばかりを聞かせるわけにはいかないと感じることもあると思います。
本当に信頼できる相談相手やカウンセラーがいれば、それは非常に心強いことです。しかし、そうした相手を見つけること自体が簡単ではありませんし、カウンセリングを利用する場合には、時間や費用、通う手間なども必要になります。そもそも、ちょっと自分の考えを整理したいという程度のことであれば、わざわざ誰かに相談するほどでもないと感じることもあるでしょう。
その点、音声入力と生成AIを組み合わせる方法であれば、パソコンとマイク、生成AIさえあれば、自分の好きなタイミングで始められます。誰かの都合を気にする必要もありませんし、話す内容を事前に整理しておく必要もありません。思いついたことをそのまま話し、それを文章にまとめてもらい、さらに客観的な意見を聞いてみる。人間同士の相談やカウンセリングと同じものではありませんが、日常的に自分自身を振り返るための手段としては、非常に手軽で取り入れやすい方法です。
まずは一度、思いつくままに話してみてほしい
今回は、音声入力と生成AIを利用して日記を書き、自分自身の人生や現在の状況を振り返るという方法についてご紹介しました。といっても、難しいことは何もありません。まずはパソコンに向かって、最近あったことや今考えていること、うまくいっていることや不安に感じていることなどを、10分でも20分でも、思いつくままに話してみるだけです。
その内容を生成AIに貼り付けて、できるだけ原文を残しながら読みやすい文章に整えてもらいます。そして、出来上がった文章を自分で読み返し、さらに「この文章を読んで、今の自分の状況をどう思うか」と質問してみるのです。必ずしも納得できる分析が返ってくるとは限りませんが、自分では気づかなかった視点が得られたり、何となく感じていたことが言葉になったりするかもしれません。
私自身、長年日記を書き続けてきましたが、生成AIをこのように活用してみたのは、つい最近のことです。それでも、実際にやってみると想像以上に面白く、自分の状態を客観的に振り返る一つの方法として、十分に価値があると感じました。仕事や人生が少し停滞していると感じるとき、何となく煮詰まっているとき、あるいは単純に今の自分を記録しておきたいときなどに、ぜひ一度試していただければと思います。