- 対象
- Mac(macOS)
- 使うもの
- Google日本語入力、Claude Code
- 電子カルテ
- 使わない
- 難しさ
- 中級
カルテ入力で使う薬名のIME辞書を、厚労省の薬価リストからClaude Codeで作り直しました。メーカー違いのまとめ方やツムラ漢方を番号で出す工夫を紹介し、辞書も共有します。
先生方は、ふだんパソコンで文字を入力するとき、どのような入力補助ツールを使っておられるでしょうか。私は、Google日本語入力という、広く使われているツールを使っています。Google日本語入力のよいところは、ユーザー辞書を自分で作れることです。ほかの人が作ったユーザー辞書も、比較的簡単に取り込めます。この便利さと、多くの人が使っているという安心感から、長く使ってきました。
なかでも、薬の名前は辞書に登録しておくと便利です。私も以前は、別の方が公開していた辞書をお借りして使っていました。ただ、自分なりに直したいところが出てきたことと、リストが古くなってきたこともあり、今回、厚生労働省とツムラが公開している一次情報から作り直しました。この記事では、作った過程をご紹介するとともに、できあがった辞書ファイルを先生方にも共有させていただこうと思います。
なお、医学用語の辞書も同じように登録して使っています。こちらは以前、別のサイトでご紹介しました。
4文字のよみで、薬の名前と容量を呼び出す
辞書の仕組みは単純です。薬の名前の頭のカタカナを4文字だけひらがなにして、それを「よみ」として登録します。アムロジピンなら「あむろじ」、ロキソプロフェンなら「ろきそぷ」です。Google日本語入力には「短縮よみ」という品詞があり、これで登録しておくと、4文字打って変換するだけで正式な名前が候補に出てきます。「あむろじ」と打てば、「アムロジピン2.5mg」「アムロジピン5mg」「アムロジピン10mg」が並ぶ、という形です。薬の名前は長いものが多く、カタカナを最後まで正確に打つのは意外と手間がかかるので、この4文字の辞書はかなり重宝しています。
厚生労働省の薬価基準収載品目リストをもとにする
元にしたのは、厚生労働省の「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」のページで公開されているExcelファイルです。全品目が1枚にまとまったファイルがあり、今回使った2026年10月14日収載分までの版では、12,442品目が載っていました。同じページには外用薬だけをまとめたファイルもあり、こちらは外用薬かどうかを見分けるのに使っています。薬価改定や新薬の収載のたびに更新されるので、新しいファイルに差し替えて作り直せば、辞書も最新の状態にできます。厚生労働省のデータの扱い方については、一般名処方加算のツールを作ったときにも触れています。
作業は、いつものように音声入力でClaude Codeにやりたいことを伝えながら進めました。Excelファイルのダウンロードから、名前を縮める決まりの実装、できあがった辞書の確認まで、ほとんどの作業を任せています。私がしたのは、どういう辞書にしたいかを決めることと、できあがった候補を見て「これはおかしい」と伝えることでした。
品名を「薬の名前+容量」まで縮める
薬価リストの品名は、「アムロジピン錠10mg「サワイ」」のように、剤形やメーカー名まで含んだ正式な名前になっています。これをそのまま辞書に入れると候補が長くなるので、カルテに書くのに必要な「薬の名前+容量」まで縮めました。外したのは、メーカー名の「」、錠・カプセル・散・注といった飲み薬や注射の剤形、シリンジやキットといった容器の言葉、塩酸塩やベシル酸塩のような塩の名前です。剤形の言葉は90語ほどの一覧を作っておき、品名から順に外していきます。たとえば「タムスロシン塩酸塩OD錠0.2mg「日医工」」は「タムスロシン0.2mg」に、「フォルテオ皮下注キット600μg」は「フォルテオ600μg」になります。
外さずに書き換えたものもあります。ナトリウム・カリウム・カルシウムは、名前の途中に出てくるときだけNa・K・Caに縮めました。「ロサルタンカリウム」は「ロサルタンK」になります。また、ドライシロップはシロップと区別したいので、外さずに「DS」として残しています。
同じ薬・同じ容量は1行にまとめる
名前を縮めると、もともと別の品目だったものが同じ名前になります。これを1行にまとめたのが、今回いちばん効いた工夫です。今の薬価リストでは、アムロジピン10mgだけで36品目あります。普通の錠剤が17社、OD錠が18社、一般名で載っているものが1つです。カルテに書きたいのは「アムロジピン10mg」だけなので、辞書ではこの36品目を1行にしています。OD錠も普通の錠剤も、メーカーが違っても、容量が同じなら1行です。カタカナで始まる品目は10,450ありましたが、まとめると6,638種類になりました。3分の1以上が、同じ薬・同じ容量の別の品目だったことになります。
ただし、塗り薬・貼り薬・坐剤・目薬などは別です。これらは同じ容量でも剤形で使い分けるので、剤形を名前に残して、別々の行にしています。ヒルドイドなら「ヒルドイドクリーム0.3%」「ヒルドイドローション0.3%」「ヒルドイドソフト軟膏0.3%」などが、カロナールなら錠剤の「カロナール200」と「カロナール坐剤200」が、それぞれ別の候補として出ます。
もう一つ、一般名や商品名の書き方が2通りある薬もまとめました。たとえば「カンデサルタンシレキセチル12mg」と「カンデサルタン12mg」は同じ薬です。頭のカタカナを短く切っていって、同じ容量の行が見つかったら短い方に寄せる、という決まりにしたところ、12件がまとまりました。口腔内崩壊錠のジプレキサザイディスが「ジプレキサ」にまとまるといったものも、この中に含まれます。
ツムラの漢方は、番号でも呼び出せるようにする
漢方は、ツムラの製品だけを入れて、ほかの会社の漢方(452品目)は外しました。正直に言えば、私が処方する漢方はツムラが圧倒的に多いからです。また、患者さんから「ツムラの何番を出してほしい」と番号で言われることもあります。そこで、ほかの会社の分で候補を増やすより、ツムラを番号でもすぐ呼び出せる形にしました。
ツムラの漢方には、よみを何通りか付けています。芍薬甘草湯なら、辞書の名前は「ツムラ芍薬甘草湯68」で、「つむら」「しゃくや」「つむら68」「つ68」のどれを打っても出てきます。「つむら」と打てば129方剤が全部並び、患者さんに「68番」と言われたときは「つ68」の3文字で呼び出せます。
番号や方剤名の読み方は薬価リストに載っていないので、ツムラのサイトで公開されている医療用漢方製剤の製品一覧のデータを使いました。ここには129方剤すべての番号・正式な名前・読み方がまとまっています。辞書に出す名前はこの正式な名前にそろえ、読み方を入れた名前も一緒に登録しました。「つ1」と打って変換すると、「ツムラ葛根湯1」と「ツムラ葛根湯(かっこんとう)1」の両方が候補に出ます。ふだんは名前だけを、読み方も書いておきたいときは読み方入りの方を選べます。芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)のように読みにくい方剤も、変換するときに読み方を確かめられます。
単純に見えて、落とし穴が多い
品名から剤形の言葉を外すだけの作業に見えますが、実際にやってみると落とし穴がいくつもありました。最初に気づいたのは、「ガバペン」が「ガバ」になっていたことです。ペン型の注射を外すつもりで剤形の一覧に「ペン」を入れていたら、ガバペン錠の「ペン」まで外れてしまいました。「ペンタサ」のように、名前の頭に剤形と同じ言葉が入っている薬もあるので、カタカナの剤形は、後ろにカタカナが続くときは外さない決まりにしています。ほかにも、「吸入用カプセル」の「吸入」と「カプセル」だけが外れて「用」が残ったり、「皮下注キット」の「キット」だけが外れて「皮下注」が残ったりしました。長い言葉から先に当てる、変わらなくなるまで繰り返し外す、といった直しを一つずつ入れていきました。
漢方でもつまずきました。剤形の「散」を外す処理をそのまま漢方にかけると、「安中散」の「散」まで外れて方剤名が壊れます。また、ツムラの紫雲膏は塗り薬なので、薬価リストでは漢方の分類に入っていません。そのため紫雲膏だけ番号のよみが付いていなかった、ということもありました。さらに、薬価リストでは難しい字がかなで書かれていて、茵蔯蒿湯は「茵ちん蒿湯」となっています。過去のリストでは「茵チン蒿湯」だったこともあり、ツムラの製品一覧と照らし合わせるときは、ひらがなとカタカナをそろえてから比べるようにしました。
いちばん大きな見落としは、最初は剤形をすべて外していたことです。記事を見直していて、ヒルドイドのクリームとローションが1行にまとまっていることに気づきました。調べてみると、剤形の違うものが1行にまとまってしまった名前が113件ありました。カロナールの錠剤と坐剤、ホクナリンの錠剤とテープ、タリビッドの点眼液と眼軟膏といったものです。そこで、塗り薬・貼り薬・坐剤・目薬などの剤形は名前に残し、厚生労働省の外用薬のリストで外用薬かどうかを見分けて、外用薬はほかの名前にまとめないようにしました。
逆に、入っているはずの薬が抜けていたこともありました。「2mgセルシン錠」のように品名が数字で始まっているため、カタカナで始まらない薬として外れていて、セルシンが辞書に一つも入っていなかったのです。容量を後ろに回して「セルシン2mg」とするように直しました。また、酸化マグネシウムやPL配合顆粒のように、漢字や英字で始まる薬も最初は入れていなかったので、読みを付けて加えました。
こうした落とし穴は、できあがった辞書を眺めて初めて気づくものがほとんどでした。Claude Codeは、漢字の切れ端が残っている名前を数えたり、まとめ方がおかしい行を並べたりして、おかしなものを自分で探してくれました。6,000行以上を目で見るのは大変なので、ここを任せられたのは助かりました。辞書に入れなかった品目も理由と一緒に一覧に残しておき、外し方がおかしくないかを後から確かめられるようにしています。それでも、まだ完全にきれいにはなっていません。
辞書ファイルの共有と、使い方
できあがった辞書は8,580行です。カタカナで始まる薬とツムラの漢方に加えて、英字や漢字で始まる薬も、よく使うものは入れています。英字の薬は英字の読み(PL配合顆粒なら「ぴーえる」)、漢字の薬は手で作った読みの表(酸化マグネシウムなら「さんかま」)の頭4文字をよみにしています。輸血用の血液製剤など、漢字で始まる薬の一部は入っていません。
辞書ファイルは、次のページからダウンロードできます。
Download
薬名辞書(Google日本語入力用)
注意事項をお読みいただき、同意してからダウンロードできます。
読み込み方は次のとおりです。Google日本語入力の辞書ツールを開き、「管理」から「新規辞書にインポート」を選んで、ダウンロードしたファイルを指定します。辞書名は「薬剤名」など、分かりやすい名前を付けておくとよいと思います。読み込んだあと、どこかで「あむろじ」と打って変換し、アムロジピンの候補が出れば完了です。なお、私が確かめたのはMac版のGoogle日本語入力です。
読み込んだあとは、次のように打って変換します。
- ふつうの薬:名前の頭の4文字。「あむろじ」で、アムロジピン2.5mg・5mg・10mgが出ます
- 塗り薬・貼り薬・坐剤・目薬など:剤形ごとに出ます。「ひるどい」で、ヒルドイドクリーム0.3%・ヒルドイドローション0.3%・ヒルドイドソフト軟膏0.3%などが出ます
- 英字や漢字で始まる薬:読みの頭4文字。「ぴーえる」でPL、「えむえす」でMSコンチン、「さんかま」で酸化マグネシウムが出ます。L-カルボシステインのように英字のあとにカタカナが続くものは、「えるかる」でも「かるぼし」でも出ます
- ツムラの漢方を番号で:「つ」+番号。「つ68」で、ツムラ芍薬甘草湯68が出ます。「つむら68」でも出ます。番号は半角でも全角でも構いません
- ツムラの漢方を名前で:方剤名の頭の4文字。「しゃくや」で、ツムラ芍薬甘草湯68が出ます
- ツムラの漢方を一覧で:「つむら」で、129方剤が番号つきで並びます。名前だけのものと読み方入りのものが両方並ぶので、候補は多めです
- 読み方も書きたいとき:どのよみでも、「ツムラ芍薬甘草湯68」と「ツムラ芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)68」の両方が候補に出るので、読み方入りの方を選びます
個人や所属施設での利用であれば、この辞書は自由に使っていただいて構いません。先生方のやりたいように、好きに作り替えていただいても構いません。ただし、販売や有料サービスへの組み込みなどの商用利用はご遠慮ください。
また、初めから作るところを体験してみたい先生は、この記事でご紹介した一次情報を参考に、ぜひ一から作ることにも挑戦してみてください。名前の縮め方や候補のまとめ方を自分で決めていくのは、なかなか楽しい作業です。たとえば、OD錠と普通の錠剤もきちんと分けて表示したい先生もいらっしゃると思います。逆に、ツムラの漢方をあまり使わない先生は、漢方をすべて外してしまっても構いませんし、クラシエ派の先生は、クラシエの漢方を加えてもよいと思います。どこまで分けるか、何を入れるかは、Claude Codeと相談しながら、ご自分の診療に合わせて好きに決めていただければと思います。
もとにした一次情報は、次の2つです。
- 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」:全品目が1枚にまとまったExcelファイルと、外用薬だけのExcelファイル(外用薬かどうかの見分けに使用)。今回は2026年10月14日収載分までの版を使いました
- ツムラ「医療用漢方製剤の製品一覧」:129方剤の番号・正式な名前・読み方
なお、この辞書は変換を楽にするためのもので、内容の正しさを保証するものではありません。処方の内容は、添付文書や薬価基準の原本で確認してください。
おわりに
作り直した辞書では、新しい薬もきちんと出てきますし、同じ薬の候補が並びすぎることもありません。毎日のカルテ入力のなかで、少しずつ効いてくる改善だと感じています。
この辞書づくりは、プログラミングの知識よりも、「候補が多すぎて探しにくい」という毎日の小さな不便に気づけるかどうかが出発点でした。どういう辞書にしたいかを決めて、できたものを見ておかしなところを伝えるという作業は、薬の名前を毎日書いている医師だからこそできる部分です。