生成AIやプログラミングを活用し、カルテ整理、病名管理、紹介状作成、経営分析などを徹底的に効率化してきました。その結果、業務は驚くほど早く終わるようになった一方で、今度は「空いた時間に何をすればいいのか分からない」という新たな戸惑いも生まれています。業務改善を突き詰めた先に見えてきた、意外な“その後”について率直に振り返ります。
業務改善を続けてきた結果、仕事の風景が変わってきた
今回は、少しいつもとは違った角度からお話ししてみようと思います。私は、このサイトを立ち上げた経緯からも分かるように、ここ数年、日々の業務を少しでも効率化することをかなり意識してきました。特に最近は、2026年の初めからClaude Codeを導入したことに加え、生成AIそのものも日々ものすごいスピードで進化している結果、業務改善のためのちょっとしたソフトウェアを自分で開発するスピードが、一気に上がってきました。本当に、1年前とはやっていることがまったく違うと言ってよいくらいです。
こちらのサイトでも何度かご紹介してきましたが、病名チェッカー、経営分析データの自動取り込み、電子カルテの操作を効率化するTampermonkey、カルテ入力を補助するWord Paletteなど、さまざまなものを作ってきました。それ以外にも、「この数クリックだけ減らしたい」「この記録だけ自動で残したい」「このデータだけ毎回集計するのが面倒」といった、自分以外にはほとんど需要がないのではないかと思うような小さなソフトまで、次々と開発してきました。その結果、仕事がものすごく効率よく終わるようになりました。
ただ、その一方で少し不思議なことも起きています。これまでは、そうした細かな業務によって結構な時間が消費されていました。言い換えれば、それによって一日の時間が埋まっていたわけです。それがコンピューターによって次々と取り払われていくことで、いわゆる「生きた時間」というか、空き時間そのものがかなり増えてきました。もちろん、それは非常に良いことです。そのために業務効率化を続け、生産性を極めようとしてきたわけですから、ある意味では自分が目指していた状態に近づいています。
ところが、特に患者さんが少なめで診療に余裕がある日には、本当に手が空いてしまうようになりました。そして最近は、逆に「この時間、何をすればいいのだろう」と少し分からなくなってしまうことがあります。今回は、業務改善と効率化をかなり突き詰めてきた結果、思ってもいなかったところに出てきたこの感覚について、少し書いてみようと思います。
クリニックには、一つ一つは小さくても大量の雑務がある
先生方の中にも実感されている方は多いと思いますが、患者さん一人を診察するだけでも、実際には診察そのもの以外にさまざまな業務が伴います。カルテ入力、病名の整理、処方、検査結果の記録、紹介状の作成などがあります。また、クリニックを経営していれば、在庫管理、発注、売上管理、シフト管理、経営データの確認など、診療とは別の事務仕事もたくさんあります。
一つ一つは、それほど大した時間がかからないことも多いと思います。しかし、それが10個、20個と積み重なっていくと、一日の中ではかなりの時間になります。実際、こうした細かな作業に時間を取られていると感じている先生は多いのではないでしょうか。私のように、事務仕事まで含めてかなり自分でやっている開業医は少数派かもしれません。それでも、どのクリニックにも細かな雑務は相当あると思いますし、それらは結構煩わしいものです。私自身、以前からそうした雑務をなるべく減らしたいと考えていました。それが、私がプログラミングを始めた理由の一つでもあります。
Claude Codeを導入して、業務改善のスピードが一気に変わった
もちろん、最初から簡単にソフトを作れたわけではありません。以前の記事でも書いていますが、自分でソフトを作るとなると、最初はかなりハードルが高く、いろいろ苦労しました。ChatGPTと一つ一つ相談しながらコードを書き、エラーが出れば調べ、また修正するということを繰り返していました。これはこれで、プログラミングを勉強するという意味では非常に良かったと思っています。ただ、やはり開発にはかなり時間がかかっていました。
その状況が大きく変わったのが、2026年の初めにClaude Codeを導入してからです。それ以前から存在自体は知っていたのですが、なかなか導入するところまで踏み切れていませんでした。しかし、実際に使ってみると、もう手放せないというレベルでした。エージェント型の生成AIを自分のパソコン上で使えるようになったことで、ソフトウェア開発のスピードが一気に上がりました。ちょっとしたニッチなソフトであれば、数時間で形になってしまうこともあります。
「この作業が面倒だな」と思ったら、その日のうちにソフトを作る。そして翌日から、その業務自体がほぼなくなる。最近は、そういうことが普通に起こるようになってきました。現場の仕事が、一日単位でどんどん効率化されていく状況を、今まさに自分自身で体験しています。
カルテ整理が数十秒で終わるようになった
具体例をいくつか挙げてみます。例えば病名管理です。これまでは、急性病名を一つ一つ確認して中止や治癒に変更するといった作業を、自分でクリックしながら行っていました。現在は、そうした処理の一部をボタン一つでまとめて行えるようにしています。患者さんのカルテの土台を作る作業についても、問診内容から必要な情報を拾い、必要な場所へ転記する作業をかなり自動化しました。サマリーに残しておきたい情報の追加や、抗原検査結果の登録なども、以前は一つ一つ自分で入力していましたが、現在ではかなりの部分をワンクリックで済ませられるようになっています。
その結果、カルテ整理のスピードがものすごく上がりました。極端な場合、本当に患者さんの診察が終わった後、20〜30秒程度で必要な整理が終わってしまうこともあります。以前は、診療終了後にもう一度全員分のカルテを見直し、整理する時間を取っていました。しかし、それがかなり減りました。もちろん、診療がかなり混雑している時には後でまとめて整理することもありますが、それほど立て込んでいない日であれば、一人ひとりの診療が終わった直後に、必要なボタンをいくつか押すだけで処理が終わります。
カルテ入力についても、自分で作ったWord Paletteを使っています。定型文などをすぐ入力できるため、文章入力そのものもかなり速くなりました。こうした小さな改善が積み重なって、診療後に残る仕事が本当に少なくなってきています。
紹介状も「書く」仕事ではなくなってきた
紹介状の作成も大きく変わりました。以前は、基本的に一つ一つ自分で文章を書いていました。現在は、Aqua Voiceという音声入力ソフトを使い、紹介状に必要な内容を一気に話してしまいます。その後、個人情報に関係する部分などを適切に処理したうえで、生成AIに「診療情報提供書として体裁を整えてください」と依頼します。すると、かなり短時間で文章として整います。
そのため、現在は紹介状を最初から最後までキーボードで一つ一つ入力するということは、ほとんどなくなりました。自分は必要な医学的情報を話すことに集中し、文章の体裁については生成AIに整えてもらう。この方法に変えてから、紹介状を書く時間も大幅に短縮されました。患者さんをお待たせする時間も減りましたし、「診療が全部終わった後に紹介状を書かなければならない」ということもかなり少なくなりました。診療の合間に3分、4分ほど時間が空けば、その間に必要な紹介状を用意して、次回までに用意できます。
以前と比べると、カルテ業務や書類作成は本当に別の仕事になってきたように感じています。今後は、診察中の患者さんとの会話を自動で取り込み、カルテにまとめてくれるようなソフトもさらに普及していくでしょう。そうなれば、また一段階仕事の形が変わるのだと思います。
診療後の締め作業も、かなり少なくなった
診療後の業務も同じです。例えば病名チェックについても、以前は病名の適正性を一つ一つ確認していましたが、現在は病名チェッカーを使うことで、かなり効率化できるようになりました。経営データの分析も、自動でデータを取り込んで集計できるようにしています。会計についても、必要な部分だけ入力すれば、あとはマネーフォワードへ取り込めるような自分専用の小さなソフトも作りました。
こうしたものを一つずつ積み重ねた結果、診療終了後の「締め作業」の中で、面倒に感じる仕事はかなり減っています。もちろん、物理的に残る仕事もあります。掃除を完全になくすことはできません。ただ、それについてもルンバを使うなど、可能なところはなるべく機械に任せています。そのようにしていくと、不思議なくらい「つまらない仕事」「面倒な仕事」というものが減ってきます。
目指していたはずの「空き時間」が、本当に生まれてきた
そのおかげで、診療後も以前より早く帰れるようになりました。空いた時間に中長期的な計画を考えたり、別の勉強をしたりする時間も作れるようになっています。診療時間中についても、患者さん一人ひとりの診療がその場で完結しやすくなったため、以前より空き時間が生まれるようになりました。
これは、まさに自分が目指してきた状態です。私は、少しでも無駄な業務を減らし、自分が本当に使いたいことに時間を使えるようにしたいと思って、業務改善を続けてきました。ですから、それが現実になってきたこと自体は非常に嬉しいことです。
ところが、ここには思っていた以上に表裏一体の部分がありました。特に、いわゆる閑散期で予約が少なく、少し手が空いてしまう日です。以前であれば、その時間に細かな事務仕事をしていました。ところが、その仕事自体を生成AIやプログラムがやってくれるようになりました。すると、本当に何もすることがない時間が出てくるのです。そこで最近、「空いた時間に何をすればいいのか分からない」という、少し不思議な状態になってきました。
業務改善のネタそのものが尽きてくる
何かやることがあれば、それは非常に良いのです。例えばソフトウェアを開発したいものがあれば、私は空き時間にそれを作ることができます。ただ、自分の業務を便利にするソフトを何十個も作ってくると、さすがにネタが尽きてきます。「これ以上、何を効率化すればいいのだろう」という状態になってくるのです。
もちろん、改善点が完全になくなるわけではありません。今まで独立して動いていたソフト同士を連携させ、その連携自体も自動化するといった改善はまだできます。また、日々診療をしていれば、新しく「ここを何とかしたい」というものも時々出てきます。ただ、以前のように「あれも作りたい」「これも作りたい」と次々にアイデアが湧いてくる状態ではなくなってきました。逆に言えば、それだけ業務改善が進んだとも言えます。
プログラミングを始めて、業務改善に取り組み始めた頃というのは本当に面白いものです。「あれも自動化できるのではないか」「これもソフトにできるのではないか」と、いくらでもアイデアが出てきます。しかも現在はClaude Codeがあります。思いついたものが、数時間後には実際に動くソフトになっています。昨日まで面倒だった仕事が、今日はもうなくなっている。それによって毎日の業務がどんどん良くなっていく。この右肩上がりの感覚は、本当に楽しいものです。
さらに、一つの業務を効率化すると時間が空き、その空いた時間でまた新しいソフトを作ることができます。そして、そのソフトによってさらに時間が空きます。ある意味では、業務改善にも複利のような効果が働きます。私はここ最近、そのポジティブフィードバックの中にずっといたのだと思います。
効率化が頭打ちになると、突然「何もない時間」が出てくる
ところが最近、その改善のペースが少し頭打ちになってきました。すると、これまでとは違うことが起こります。ぽかんと時間が空くのです。以前であれば、空き時間ができると「よし、この時間で新しいソフトを作ろう」と思っていました。しかし、作りたいものがそれほど残っていない。すると、「あれ、何をやればいいのだろう」と思ってしまいます。これは意外とつらいものなのかもしれません。
実は今、この文章を書いているのも、「このことを率直に記事にしてみたら面白いのではないか」と思ったからです。ただ、この文章を書き終わったら、今度は「さて、この後どうしようか」となります。冷静に考えれば、本を読んでもよいですし、勉強してもよいですし、経営について考えてもよいでしょう。時間があるのであれば、別に小説や漫画を読んでもよいはずです。やること自体は、いくらでもあります。それでも、突然ぽかんと時間が空くと、妙に落ち着かないのです。
この感覚は、先生方の中にも経験されたことがある方がいるのではないでしょうか。例えば、ものすごく忙しい病院で勤務していた医師が、医局人事などで別の病院へ異動し、そこが比較的余裕のある病院だったとします。それまで毎日、息つく暇もなく働いていたのに、急に時間が空く。すると、「こんなに暇でいいのだろうか」「今、何をしていればいいのだろう」と少し戸惑うことがあります。今の私の感覚は、それに少し近いのかもしれません。
もちろん、雑務はないに越したことはない
ここまで書いておいて矛盾するようですが、もちろん雑務はないに越したことはありません。面倒な仕事がある状態とない状態であれば、ない方がよいと思います。時間に余裕があるかないかで言えば、時間に余裕がある方が絶対に良いでしょう。ですから、非常に贅沢な悩みですし、今回の記事はある意味ではかなりしょうもない話です。
ただ、生産性をかなり突き詰め、業務改善を続けていった先に、意外とこういう風景があるということは、自分自身やってみるまで分かりませんでした。「仕事を減らしたい」「もっと時間が欲しい」と思って業務改善を始めたのに、本当に時間が生まれてくると、今度はその時間をどう使うのかという別の問題が出てきます。
業務改善というと、一般的には「どれだけ時間を減らせるか」「どれだけ生産性を上げられるか」というところまでで話が終わります。しかし、かなり効率化が進んだ先には、「浮いた時間を何に使うのか」という次の課題があるのかもしれません。
もちろん、私にも勉強しなければならないことや、今後考えなければならないことは多くあります。本来は「暇だ」と言っている場合ではないのでしょう。ただ、今は少し、成長過程の階段の踊り場に立っているような感覚があります。これまでひたすら業務を改善し、ソフトを作り、生産性を上げるという階段を上ってきました。そして一度、少し平らな場所に出た。次にどの階段を上るのかは、まだはっきり決まっていません。
今回は、そんな現在地をそのまま書いてみました。業務改善を進めている先生方にとって、「効率化を進めた先には、こんなこともあるのか」と、少しでも何かの参考になれば幸いです。